失われた地図

恩田陸・角川文庫

直木賞受賞後1作目、って本当かな。本屋のハードカバーの帯にはそうあった。
今回の文庫化にはすぐに気付いて楽しみに読んだのだけど、読後の書評サイト巡りでも酷評が多かった。
さもありなん。恩田先生、うーん、こっちで来たか。
「雪月花黙示録」や、「ロミオとロミオは永遠に」などの架空ワールド破茶滅茶系。
「禁じられた楽園」や、遠野シリーズくらいのスピリチュアル系ならまだ耐え得るのだが。
本作は私もちょっと厳しいかも。

いつものフレーズである “かしらん”は、本作では不発?
終わり方の投げっぱなし感は「Q&A」に近いかな。
舞台説明も碌に無く、どう終わるんでしょ?と怖れていたらコレだものね。
やっぱり恩田陸慣れしてる読者は常野シリーズを想起するよね。でも関係なさそう。

カオルは、「MAZE」シリーズの神崎にキャラ被りする狂言回し。むしろ田中芳樹の創竜伝のなっちゃんか。
キャラの力業に頼って欲しくはないのだが。
蝶使いのハナシは、他の短編集でも読んだことあったな。あれは常野シリーズ?
土地の持つ記憶、みたいなテーマは三崎亜記に通じるのではないか。

雑誌連載だとどうしても1話1話で盛り上がりを演出しようとしてハチャメチャになっちゃった?
幕間は、素直に読めば鮎観と再婚相手(大臣?!)ってことになるが、当然にそれはミスリードで本当の解があるのだろう。
でもね、この展開で焦らされても、最終章のあの投げっぱなしオチなら、解もへったくれも無い。
浩平は二人の息子ではないのか? あ、遼平の甥か、ずっと勘違いしてたよ。
上野の回で、ラストメッセージとなる「ダイジョウブ」が既出なのも、やはり伏線なんだろうね。

恩田陸好きでも評価の分かれそうな1冊。
できれば次はもう少しちゃんとしたヤツを読みたい。

(19/10/09)


黄色い本棚へ戻る

私の本棚へ戻る

タイトルへ戻る