賛否両論ありながら、第7回「このミス」大賞となった、この作品。
確かにこれはミステリか? って違和感はある。
死体が出ればミステリなんだ、と言うなら異を唱えたい。
これは、むしろファンタジーなんじゃないか。
愛すべきキャラクターたちが交わす会話のテンポの良さは認める。
伊坂幸太郎に似てると言う見方もある様だが、むしろ石田衣良のIWGPシリーズのノリに感じる。
そう分類しとけばミステリファンも目くじら立てないのでは?
それでいて、ラストはとてもシュールに9.11以降の世界の一つの可能性を描きつつ、
肝心の屋上にもクライマックスが訪れる。
偶然も3つ目からは必然だ。
これはパトレイバーの後藤隊長のセリフだったかな。
偶然に基づくご都合主義は否めず、筋がしっかりした本だとは思わないが、
恩田陸の投げっ放しや、辻村深月のご都合主義を許す私にとっては許容範囲か。
エールたっぷりの後書きにて整理された系譜も含めて、読後にイヤな気分はしなかった。