前回と同様、ほぼ半年ぶりに喜々として手にした恩田陸の長編文庫化。
楽しみにしてたの、ホントに。しかし、読むのに時間がかかった。
まぁ、同時期にスマホアプリの「ロマサガ2」に傾倒していたのも事実だが。
恩田陸には正解は無い。
パラレルワールドの学園モノとくれば「ロミオとロミオは永遠に」。今回もミヤコを舞台に刀をもった学生が大活躍。
三崎亜記の様にはならないんだな、残念なことに。どちらかというと田中芳樹の創竜伝シリーズだね。
帯によれば、『構想10年 恩田陸のエンタメ新境地!!』ということらしいが。
私が初めて読んだ恩田陸は「ネバーランド」で、その後すぐに「麦の海に沈む果実」を手にした。
学園モノならそっちに帰ってきて欲しいけどね。
このままで終わっては、作中に何も触れて無いままだな。
最近の恩田陸で困るのは、ストーリーの根幹に乗り切れないこと。
「きのうの世界」などはまだ序盤のミステリアスな空気を楽しめるんだけど、今回は帝国主義者とミヤコの対立が今一つ分からない。
これが私の理解力の低下だとしたら、「夜の底は柔らかな幻」なども含めて恩田陸を楽しみ損なっているのだろう。
佐伯の離反は予想の範疇だし。ツインタワーのあの姉妹は狂言回しでお終い?
ミッチーももっと底意地の悪い悪人に仕立ててあげないなら、いっそピエロのままで良かったと思う。
なんか魅力的なキャラが減ってしまったな。
理瀬と憂理、「黒と茶の幻想」の蒔生、烏山響一、「木曜組曲」の絵里子、「中庭の出来事」の楠巴、この辺までかなぁ。
刊行済みで未読の恩田陸長編は「エピタフ東京」「ブラック・ベルベット」「消滅」とまだ3つ残っており
この中のどれか一つでも文庫化で堪能できれば、それで良いや。確率3分の1。
辻村深月も道尾秀介も、リタイアしてしまったけれど恩田陸はどこまでもついていくよ。