片眼の猿

道尾秀介・新潮社

確かに全てを見破るのは不可能だろう。
いろいろ伏線を明かしていく部分は面白かったが、そこまでが冗長。
トランプから泡坂妻男みたいになるのかと思ったけど、そうではなかった。

冒頭のイヌの鼻のミスリードで、てっきり耳や目が大きいと思うじゃないか。
でも逆なんだな。三梨幸一郎こと「みなしご一郎」の他の語呂合わせは「耳無し」だったのね。
ローズ・フラットの皆にも、それぞれの特徴があったが、ただ一人「地下の耳」のマスターは片眼の猿じゃないみたいだね。
彼が三梨と冬絵をチラチラ見てたのは別の理由があった。

ダイアのクイーンの胡散臭さを早くから匂わせて、あたかも秋絵の死にも一枚かんでいるような雰囲気で去っていく。
ここからの終盤がどんな話になるのか読めなかった。
三梨の復讐か。四菱に? タバタに? 谷口楽器とはこのままあっさり契約解除?
『向日葵〜』パターンの錯誤で落とすのか、『ソロモンの犬』みたいな解が用意されてるのか?
すると、なるほど復讐の相手は更にいたって訳ね。

「地下の耳」でのマスターとのお別れ会のシーンは好きなんだけど、そこで語られる「あくどい人間=深海魚」理論も然り
木を隠すなら森の中。一つの過ちを、数多くの過ちで薄めてしまったのは真犯人も同じ。
ただ刺された時の描写が体を貫通している様に思うのだが、四菱のフィギュア如きで逃れられたのが分からなかったが
ひょっとして、あれはフィギュアの体を貫通したって事か。

最後の謎解きからが面白い。それまでは伏線を仕込んでいる部分みたい。
まぁ、ストンはストンだけど、ネタの回収までが迂遠だ。

全てを承知した上で2周目を読むと細かい伏線が多々ある事に気付く。
ネタバレOKの方はこちらもどうぞ。

(09/05/14)


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