ネバーランド

恩田陸・集英社文庫

赤裸々、と言う表現が相応しいかな。
隠しておきたい恥部が次から次へと露呈される。
上位自我から解き放たれた、日常の空間での非日常の空気。
『蝿の王』を思い出しました。

4人の男子校生徒に共通しているのは、どこか歪な家族構成。
義国は父の不倫に起因するトラウマを持ち、
寛司の両親は離婚調停中。
一見クールな光浩は妾腹であり、正妻との暗い過去を持ち、
統は母親の自殺を受け止められず、旅立ちを前に最初の『懺悔』を始める・・・

ところがまぁ、それでもどこかほんのり温かい。
ようやく分かってきた。これが恩田ワールドか。
男子校で3年間を過ごした経験のある私にとって、この物語はやはりどこかノスタルジックだ。
この物語の時代背景は明らかにはされていないけれど、少なくとも携帯電話もネットも出てこない。
我々の高校時代に置き換えても成立してしまう。
こう言う『合宿』的な非日常による絆の深まりは無かったけれど、
今も私の周りにはあの頃の友がいる。

彼ら4人も、高校2年生の正月から10年くらい経った後、一同に会しただろうか。
統はラボを立ち上げ、光浩が経理を勤めているだろうか。否、だろうな・・・
寛司はバリバリの営業マンって所か。義国はそのままアスリートの道を極め、その傍らには紘子がいたりして。
寛司を通して語られた相対的な生き方、私もあの口だな。
光浩の様にクールでシュールな生き方をしてみたかったんですけどね、
実際に一番近いのは統の軽さかな。あそこまで回転は早くないし、敏捷性には欠けるけどさ。
作者自身が省みた通り、義国はストリーテラーとしてキャラクターはまともになり過ぎたかもね。

やっぱり第1回本屋大賞(正式名称は忘れましたが)に選ばれた『夜のピクニック』を読んでみたいね。

(06/3/30)


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