君たちに明日はない

垣根涼介・新潮文庫

テーマはズバリ “リストラ”。
池井戸潤や荻原浩なんかで、この手のテーマを読んだことはあったけど、
垣根涼介は「ヒートアイランド」のイメージが強かったので、どんな感じになるのかちょっと楽しみ。

5つのエピソードの連作ではあるのだけど、
村上を中心に何人かのメンバーは5つのエピソードを渡り歩く事で、この世界観に縦糸が通されてる感じ。
読んでる私自身はここまで転職やリストラとは無縁でいられたけど、いつまでもこのままでいられる確信は無く
そうなって初めて、自分自身を示す絶対的な価値が無い事に気が付く。
会社の中の相対的なポジションは、その会社を一歩外に出た瞬間に雲散霧消してしまう程度のあやふやなもの。
己の何に価値があるのかは、いつも冷静に見極めなければならないのだろう。

それと同時に、いついかなる時も、自分がこうでありたいと言う理想や夢を持っていなければ
人生って流されるだけの淋しい物なのかも。
作中でも語られていた通り「やりたい仕事」ができている内は、人はそこそこ耐えられるもの。
そう考えると私の場合は、今の分野で仕事ができているのは良しとしなければならないだろうし、
これを守っていくべきなんだろうな。

「山本周五郎賞」受賞作だった本作。ちなみに買ったばかりの恩田陸の「中庭の出来事」も同賞受賞作。
どうみてもジャンルは異なると思うのだが。いったいどんな選考基準で受賞しているのやら。
これで恩田陸を読む楽しみが、また一つ増えたな。

(09/08/14)


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