ソロモンの犬

道尾秀介・文芸春秋

これまで読んだ道尾作品に比べると超常能力とは無縁で、一番面白かった。
深読みしたつもりが、全て浅知恵でキャラクターたちにはぐらかされる。
ひろ子の携帯チェックとか、椎崎助教授と京也の関係とか、オービーへのシグナルとしての京也の雀狩りのポーズとか。
いずれも、「しめた、読めたぞ」と思ったら次から次に惜しげもなく明かされてしまう。

ミステリーしては犯人がいないと成立しないから、
終盤に無理やり犯人が仕立て上げられた感が否めない。
静が被害者になる理由があまりにも稀薄と言うか唐突なんだけどね。
ミスリードのまま、やはり京也が真犯人なのか?と読み進めていく訳だが
静の死に関わった謎の人物が現れ・・・

学生同士の会話はリアルに描かれてると思う。
若さとか、厭世観とか、恋愛感情とか、そう言うのは上手くキャラクター描写されてた。
でも、それ以外のキャラクターが軽い。
静の家族のエピソードも、もう少し膨らむのかと思ったらそうでもなかった。
間宮がクリスチャンである事も。
振り返ると、陽介の死も、鏡子の死も、哀しむべき事実なんだけど、案外軽いんだよね。

『冥途荘』が『三途の川』へのヒントだったのか。
バーベキューにバベルね。明夫さんは、このミスリードの為だけに描かれた気がする。
選ばれた死者って訳だ。
そして木原さんの“お料理カンカン”がメガネと包丁の組み合わせ。
静の母親も、はっきり言ってこの伏線の為だけに描かれてる気がする。

今回の「ミチオ」は間宮先生。

(08/08/24)

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