今邑彩・集英社

自身曰く「ホラー風味のミステリー」と言う短編集。
ひと言ずつ感想を。

○カラス、なぜ鳴く
父親不在の中、家族の問題は解決してしまう。たとえそれが最善では無いにせよ。
父親にはそれこそがホラーか。

○たつまさんがころした
兄弟姉妹の長子は、どこか光を独占したいところがあるのだろう。末子はそれを冷ややかに見ているのだろう。
辰馬が殺したわけじゃ無さそうだから、夏美のお腹の子も大丈夫かな。

○シクラメンの家
子供の観察眼を侮ってはならない。
パパに魅力を感じると言う娘の友達(美紀ちゃんね)を、連れてくるなと言うママの心境は嫉妬なのか? 浮気してたのに?
でもそれは諸栓火遊びで、一瞬の物憂げだから心に残る訳か。

○鬼
見つからない事の方が怖くなる。そんなコペルニクス転換。

○黒髪
火の鳥 みたい。目の前で繰り返す因果。分かっているのに、それを止められず受け容れるしかない達観。

○悪夢
自分が生まれる前の記憶、胎児の時の記憶、そんなテーマは他でも読んだ事がある気がする。

○メイ先生の薔薇
子供って意外に残虐。でも、さすがにこれは作り話で、メイ先生は幸せな家庭を築いたのだと思うよ。
39人もの子供たちから、情報漏れが無いなんて事はあり得ないだろうしね。
あんな話を聞かされたらバーテンだって幽霊を見ちゃうさ。

○セイレーン
Y2K。2000年問題ってあったなぁ。
自殺サイトが問題視される前の頃かな。時代の先取りだね。

短編集なので、前半の3作と、後半の5作は執筆時期が異なるという。
言われてみれば、確かに雰囲気が違うかな。「鬼」とか「黒髪」は不条理ホラー炸裂。
今邑彩、悪くないけど図書館止まりだな。

(10/07/25)


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