夏服パースペクティブ

長沢樹・角川書店

地下室、理科室の密室トリックなど箱物ネタや、HALのPV撮影で描かれる真壁の撮影技術などは、正直よく分からない。
むしろお得意の叙述トリックね。まゆたんは、5章まで読んだときに前作の事を思い出し
読み返したら、そう言えばまゆたんって・・・!
秋帆との風呂場での遭遇は、羨ましいぞ。
マーヤに仕掛けられた時間差トリックについては、フェアな伏線があちこちに散りばめてあったので、途中で確信を持てた。
街田さんの男言葉にも、何かオチがあるのかと思っていたけど、こちらは外れ。

桐野の殺意は、かなり強引な伏線が張られている。
首を切り落とす役割は、女子高生が簡単にやり遂げられるものでは無いと思うのだが。
マーヤは怪しさ満載のキャラで、第一被害者として退場するのかと思ったが外れ。
怪しさの点では名塚も曲者で、こっちがクロスボウで撃たれて死んじゃった・・・と思ったらそれは『夏フリ』世界での虚構。

前提条件となる豊崎事件の描かれ方が今一つ。
報道協定を結んで生き残り3人を放置しておいたと言う事だが、その3人が簡単に邂逅してしまえるのはご都合主義。
遊佐家がここ数年父子家庭という件は、母親が豊崎事件に関連しているのか? と思ったけど外れ。

『夏フリ』撮影は、なんだかAKBドキュメンタリー映画撮影にも触発されたのか。
入れ子構造としては、恩田陸(直木賞おめでとう!)の「中庭の出来事」を思い起こさせるな。
・HALという女子高生2人組のPV『空蝉乙女』を永野美鈴監督で撮影。
・そのPV撮影をする過程をドキュメンタリー映像『夏服とフリッカー』として真壁が撮影。
・そして、その真壁に、ミステリ作家<桐谷ノエル>がクロスボウのアイディアを吹き込む。
・真壁(坂下亜里砂)は、その環境下で名塚(小清水佳織)と、大迫(広瀬真文)の覚醒を目論んだ。

しかし、途中から天変地異(土砂崩れ)まで起こるから、もう何が何やら。
犯人の意図的な殺意と、偶発的な天変地異と、2つの遺体を解決できるのか心配になった。
探偵父親まで駆使して、かなりご都合主義ではあるが、とにかく解は示した。恩田流投げっぱなしジャーマンとは違った世界観だね。
どうやら第三作もあるようだ。今度読んでみよう。

(17/01/21)


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