逆回りのお散歩

三崎亜記・集英社

存分に三崎ワールドを堪能。
ステマ、自虐史観、“西州時報”、そして音への拘り、いろいろなものが散りばめられてて良かった。
これ、石原さんから猪瀬さんへ継承された都政へのアンチテーゼという一面もあるんだろうか。

この国にあって、潮流とか、世論とか、メディアの醸し出す一方通行的な力は
時に史実・真実・正義などと呼ばれるが、所詮は片側からの一方的なものでしかない。
必ず、それに釣り合うだけの反対の面があり、その間の揺れがビジネスになる。
なんだか、田中芳樹みたいだ。

遊んでいた、あの子供たちですら一枚噛んでいると読むのは、強ち穿った見方では無いんだろう。
無垢だけに、作られた流れに染まってしまうのだから。

『戦争研修』の方は、「となり町戦争」の前日譚な訳ね。
固有名詞を排した本編と異なり、固有名詞を殊更晒しているかのような対比も、あの作品に似てるじゃないか。
理論と正当性をつくるのが役場の仕事、か。ひいては、時の政権もさもありなん。

三崎亜記の自治体にかける思いの深さと言うか、執念のようなものを感じられる作品。
つまりは、愉しかったという事。

(14/4/27)


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