おやすみラフマニノフ

中山七里・宝島社

ラストのシーンが絶命ならば、これまた気前よくキャラを葬ったもんだ。
前作でも序盤に主要人物を散らしてたし、これが持ち味なのかな。

前作に続いて、魔法使い岬洋介がおっとりと獅子奮迅の活躍。
今回は探偵としてよりも、マエストロとしての出番が多かった。
彼の≪皇帝≫を聞いていた白杖のおじさんは前作にあったシーンだよね。
アサヒナ・ピアノコンクールも、「さよならドビュッシー」とパラレルしている訳だ。
アマゾネス下諏訪さんにも、こんな展開が待っていたなんてね。

今回は時価2億円のチェロが消えた、と言う密室ミステリから牽引される物語が
どこへ進んでいくのか、途中で見失いかけた。これは一体何のハナシなんだと。
突如、降って湧いた麻薬に関する疑惑は何の意味があるのかと。

3.11を髣髴とさせる自然災害の場面で岬と城戸の臨時コンサートの是非はあろうが
あの表現力はすさまじいものを感じた。奏でられている音についての描写は圧巻。
ただし、私も音楽に携わった事がある故に、感じ取れるモノもあるだろう。
普段クラシックなど聞かない人には、どんな風に読まれるのか、ちょっと興味ある。

さて。物語後半で急に初音のケガや、学長の殺害予告などミステリアスな展開に。
岬の過去も語られたり、少しミステリの雰囲気が出てくるのだけど、犯人はここまで
出てきたキャラの中に絞られるのだが、雄大くらいじゃないとパンチが効かないと思うが。
・・・何? まさか、あの人が! と思ったら、更にどんでん返し?

とかクライマックスを読んでる辺りでちょうど忙しくなって、しばらく放置していたため
残りを読み始めた時、読み手側のテンションが醒めてる部分もあり、ちょっと勿体無い事した。
最後まで読むとなるほどね。序盤に幾つも伏線は用意されていた。
確かに読んでる最中に、これって何か怪しいぞと感じたものもあった。

ミステリとしては、ちょっと薄味なんだけど読後の爽快感と言うか後口の良さは評価できるかな。
次も岬先生の活躍が期待できるのなら、楽しみだな。

(11/05/15)


茶色い本棚(国内作家)へ戻る

私の本棚へ戻る

タイトルへ戻る