切り裂きジャックの告白

中山七里・角川書店

犯人に必要なものは、動機・情熱・捕まらないための計算、だそうな。
確かに、危険を顧みず陰惨な事件を起こすだけの動機を持っている切り裂きジャックは誰なのか?
当然、ミステリの王道として真犯人は序盤から登場している人物に限られるのだけど
どこでどう落とすのか、最後まで楽しめた。
犯人の格としては、榊原先生あたりを疑ったんだけどね。

脳死や臓器移植へ一石を投じるところまで、作者の意図かどうかは分からないし
IPS細胞や、ましてやSTAP細胞など、行き過ぎた科学が、既存の倫理観とせめぎ合うと言うテーマは
「ジュラシック・パーク」などでも提起される問題ではあるのだけど、一度手にしてしまった技術を捨て去る事は難しく、
もう元には戻れないのだろうね。

それにしても、こんな事件の第一発見者になってしまった陸上選手や女子高生はトラウマだなぁ
とか要らぬ心配をしてみたり。

(14/5/3)


全く内容を覚えておらずたまたま再読。2週目もストンと落とされた。
なんで知ってるのかな、デジャブかな、ドラマ化されたんだっけか?なんて思いつつ
やはり、鬼子母涼子はミスリードだよなぁ。榊原先生が怪しいなぁ、とかね。
脳死臓器移植問題は、原発存廃問題と同じく、総論賛成各論反対という構図か。
DVまで扱って、やっぱり盛り込みすぎの感は同じだった。
永江朗氏の解説にカズオ・イシグロの「私を離さないで」が出てくる。ノーベル文学賞を取ったばかりのタイミングで奇遇だね。

(17/12/22)


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