「蛇行する川のほとり」

▼終章を読んで

やられた。
唯一推理できたと思った香澄の愛した人の種明かし。でも好きな男は、って話しじゃなかったか。
まぁ、好きな男性は父親だが、それ以上に母親の方が好きだったって事ね。
そう言う意味じゃ芳野が舞台上で演じた香澄は、やはり芳野の真実でしかなかった訳だ。

香澄と芳野と真魚子と毬子で女版ネバーランドですか。
いずれも退場は1人。
たださ、そうすると香澄の死を必然とするのか、偶然とするのか悩むな。
香澄の死が覚悟の死ならば、もう少し能動的である必要があると思う。事故の巻き添えってのはなぁ。
一応、毬子の口から自らの死を省みず毬子を救ったって事にはなってるけど。
それでいて、終章の中でいつの日か毬子に語った真実を他の皆にも語る日の事を想起している。
やっぱり自決の意思はなかったのか。

香澄を失って月彦はこれからどうする?どうやら真魚子は月彦に惚れたか。
暁臣は宵子の呪縛から完全に解き放たれ、毬子への執着も失うのか。
香澄亡き後、生き残った中のキャラでは大人びた芳野も、これから萩野と直樹相手ではどうだろう。

最大のテーマ(勝手に)である毬子だった理由は「香澄子」だった時に遊んだと言う接点?
なぜ今かと言うタイミングは高等部で一緒になった夏だから?
でも美術部入部は香澄の意思ではどうにもならず偶然だよね。


ここからは野暮と知りつつツッコミ編。

香澄が高校入学と同時に引っ越してきた(p14)って?1年の秋に編入だったんじゃないのか。
月彦の天使(p25)って?香澄に付き纏う守護天使ってただの皮肉?
毬子母が憎む(p245)べきは合宿に誘った芳野ではなくて?真魚子への親しさが裏返るからか。
暁臣や月彦が懸念していた香澄が毬子を道連れにする(p247)動機は?
死ぬと言う事は許される(p264)って感覚はやはり日本人のどこかにあるのは否めないか。余談ながら前農相の自決をふと思う。


■蓮見毬子
 高校1年生。香澄の美術部の後輩。父親は病理学者。

■久瀬香澄
 高校3年生。10年前に母親を事故で亡くす。香澄子から香澄へ改名。父親の再婚・婿入りに伴い苗字も変わり、事故の遭った町へと帰ってくる。

■斉藤芳野
 高校3年生。香澄の幼馴染み。父は公務員。祖母が霊能力を信じている事、母と姉(萩野:音大で声楽科専攻)が同タイプである事を嫌っている。幼い頃、香澄子のある行為を手伝う。香澄が帰って来て以来は互いを手錠で繋いだ様な離れられない存在に。美術の才能に長け、美大志望。(香澄の両親と芳野の両親は、奔放な母親に朴訥な父親と言う類似点ありなのは、何かの対比なのか)

■真魚子
 高校1年生。香澄の母親が死んだ時に捜査をしていた警察官の娘。祖父は寺の住職。

■貴島月彦
 高校2年生。香澄の従兄弟(母親同士が姉妹)。実家は薬局を経営。10年前の事件の一因に責任を感じ、密かに香澄の犯行ではなかったか疑っている。

■志摩暁臣
 高校1年生。月彦の幼馴染み。10年前に1つ年上の姉(宵子)を事故で亡くす。


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