ロードムービー

辻村深月・講談社

○ロードムービー
やはり辻村深月を甘く見てはいけない。
電車の中だったのに涙を拭ってしまった。
いつものオチとは若干異なるものの、辻村流の仕掛けが施されている。
こういうストレートな作品も良いね。これは短編だからこそか。

マコトね。最初は「誠」なのに何故?、あぁ「真琴」かな?、とか考えさせられたけど、まんまとはめられてる。
これがストンと落ちるから心地よい。

学校の中の確執は毎度のテーマだけど、その他にも辻村ワールドの根幹を成しているのが“弱さ”。
「冷たい〜」の二人のヒロでも描かれた様に、子供視線で守りたい物を守れない悔しさや
親の力と自分の無力さの対比などが、読んでてグッとくる。

■10/04/03追記■
辻村好きが聞いて呆れる。これもしっかり「冷たい〜」ワールドじゃないの。
mixiの辻村コミュで、裕二と景子のでき婚である事が書かれてた。
思わず再び図書館へ。なるほど諏訪慧恵なんだもんな。政治家と医者の娘か。
弁護士となったタカノおじさんは、鷹野おじさんなのね。結婚するのはみーちゃんか。
いやはや、2度目に読んでも泣きそうだったよ。


○道の先
「冷たい〜」の片瀬充の後日談と思われる。G大学の2年生として再登場。
良いね、良いね、こう言うの。冒頭の会話は恐らく梨香とのものでしょ。
彼が頼った東大生は恐らく鷹野でしょ。飄々としたナイスキャラで友情出演ってところだ。
きっと千晶は梨香に似てるんだろうな。千晶探しの手伝いを依頼する際に、鷹野にも梨香に似てるって言おうとしたんでしょ。

一瞬、辻村ワールドが故に先生≠男性で、景子辺りが主人公かとも疑ったのだけど、
彼女がいるかどうかを気にされてるんだから、やっぱり片瀬充で良さそうだ。

ファミレスでのデートの後に、千晶が塾を欠席した時は死んじゃったのかと思ったが、
ここは恩田ワールドでは無かった。
やっぱりこのハナシも千晶の、そして充の“弱さ”が描き出されていて、
その弱さを肯定的に守ろうとしているのかな。
何時の間にか昔の弱かった自分を超えた、今の自分がいる。きっとそう思える日が何時か来るから。充の痛切なメッセージ。

エピローグで菅原榊を訪ねる二人。
新幹線で静岡へ行く電車が出るホームって事は東海道新幹線。それで3時間乗って鈍行に乗り換える辺りに彼はいるのだね。


○雪の降る道
引続き、みーちゃんとヒロくんって事は、深月と鷹野か!
しっかりスガ兄も登場し大活躍。今は亡き二人目のヒロもチラチラと見え隠れ。
「冷たい〜」でも触れられていた過去が、このハナシなんだね。

そしてエピローグは「冷たい〜」のプロローグへ連環する。


とかく辻村深月を読んでいると、温かい気持ちになる。
さて、「ぼくのメジャースプーン」ではどうか。

(09/05/09)


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