阿刀田高は高校の時にはまって読み漁りました。短編集が多いのですが、
これもその例に漏れず10個の
作品が収められています。しかし、それだけではないところが凄い。
タイトル通り、観覧車のゴンドラよろしく10個の作品中の主人公が、それぞれ一つ前の作品の
脇役として小説内に登場していたのです。
私鉄沿線の街の住人たちは自分自身の生活を送ると同時に
他人の人生をも某かの色で彩っているのです。
と、後書きを読んで驚いて読み返したのだが、すべては見つけられないんです。
しかし、阿刀田の作品はホントにブラック・ユーモアというか、捻りの効いた作品が多いので
読んでて飽きない。何度読み返しても面白い。私が忘れっぽいせいもあるかもしれないけど
いつ読んでも結構新鮮な驚きを与えてくれるのが嬉しいですね。
「拗ねた血」が一番気に入ってます。何気ない日曜日の雨も伏線だったとは、ビックリ。
願いは必ず外れる、という単純なプロットを巧妙に傑作へと仕立て上げるその手腕に
惹かれるね。「赤い音」も母の帰りを待つ太郎君の破壊的衝動は遂に妹へ? と引っ張っておいて
一瞬ホッとさせる。で、あのラストだもの。「小麦色の王妃」もやっぱりツキのない人は
どう頑張っても(犯罪に手を染めるのはヤバイけど)報われないんだね、という苦笑いさえ
浮かんでしまう。
阿刀田作品は軽快にテンポ良く読めるのが良いですね。切り口も秀逸だと思いますよ。
愛読して結構経ちますが、どうした訳か阿刀田の顔を井上ひさしと勘違いしていて
阿刀田を読んでる時は漠然と頭の中に
井上ひさしの顔がよぎるのは困ったものなんですけどね。