闇の底

薬丸岳・講談社文庫

一つの罪は、多くの不幸を生む。決して癒えるのことの無い苦しみは、波紋のように広がっていく。
悪をどのように断罪するべきか、当事者にならないと答えなんて出せないのかもしれない。
この手のテーマは、裁判員制度の導入でまた広がりと奥行きを生んだんではなかろうか。

ミステリとしての本著は、犯人推理で十分に楽しませてもらった。
サンソンが誰なのかは、消去法からなかなか良い推理ができた。
最初は三枝係長なんかも疑ったんだけどね。
ただしサンソンの大義がどこから生まれたのかが、ちょっと弱いかな。
長瀬の父親の報復ならストレートだけど、まぁ娘の存在が彼を変えたって事になってはいるが。

終章は無くても良かったかな。でもラストを書かないで逃げる訳にもいかないか。
サンソンは捕まらなかったとしても、彼の裁きが終止符を打たれてしまっては
恐れも残らないと思うのだが。もしや長瀬がその遺志を継いでしまうと言う事なのか。
或いは、結局は杜撰な計画の終焉と言う事なのか。

誰が紗耶の父親か。読みながらのネタバレ推理はこちらから。

(11/10/16)


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