この著者は初めて。中山七里の岬シリーズの様なクラシック音楽ミステリを予想していた。
何だか不思議な出だし。気の持たせ方は恩田先生とも違うが、巧妙に仕掛けが張り巡らされてる予感。
ただし何のハナシなのかが全く見えない。
ミステリーにしては、殺人事件が起きるのが遅すぎる。
「僕らのダヴィッド同盟」第四のメンバー末松の登場も。
いったい、どこまでが虚構なのか。
途中で、この後ストン落ちるのだろうかが心配になってきた。
恩田先生並みの投げっぱなしジャーマンなんじゃなかろうか。
修人がピアノを弾きたがらない理由や、
岡沢美枝子を殺害したのは鹿内なのか、
修人が指を失う不幸な事件はちゃんと語られるのか。
そんな中、岡沢美枝子殺害犯=修人、これはまあ、妥当な流れかも。
一流のキャストには一流の役を与えなくてはね。
ただし物語の中の世界とは言え、安易に殺人は許されぬべきであり、岡沢美枝子殺害犯は捕まるべきなのだ。
ましてや末松佳美の死も事件であるならば。
そう言う意味で、最後の手紙の返事があってはじめて物語は完結すると思うのだがね。
もちろん、そこまで書いちゃ無粋なんだが。米澤穂信の「儚い羊たちの祝宴」みたいな最後の1行でどんでん返しなのかね。
著者はシューマンが好きなのかね。シューマンのウィキペディアみたいな感もある。
それに修辞の多様さは目を見張る。
修人のセリフは、かの小澤征爾も同じ様な事を言ってた気がする。
正確に弾く事だけが正しい解釈じゃないみたいな事を。
そして優のセリフは、田中芳樹がアッテンボローあたりに演奏されない名曲なんてないと語らせていたはず。
何とも不思議な1冊で2012年はスタート。