帯にある累計13万部のシリーズも知らぬ、初読みの著者。恐らく東京にいる時のN先輩からのお下がり。
ずーっと積読だったのだが、ようやく手が伸びた。
序盤は移動中の電車で小分けに読んでいたのだが、後半は惹き込まれてペースも上がった。
カリスマの凋落は、「砂の王国」を思い出した。神様は二人要らない。
榊が出てきたあたりからゲソ総帥の迷走が始まる。そもそも稲垣の紹介で簡単に傾倒しちゃうのも何だかね。
成りあがりのモチベーションが、親へのコンプレックスというのはまずまずのリアリティ。
ただし、本店の拓馬が唯々諾々と従っているのがご都合主義に見えてしまう。
頂きに上り詰めた権力者が傲慢に豹変するのは、現実のゴーンさんと被るようなよくある話。
ひたすら耐えていたカネさんが決死の覚悟で総帥を批判したシーンは涙をさそった。
なのに、川俣との間で同じ構図に陥ってしまうのも宿命なのか。
側近の命をかけた抗議というのも、王道の展開。
凡そ自殺とは縁遠いと思われたゲソの死は、妻への最期の贖罪であったかどうかは分からない。
されど、王に仕えた忠臣であらばこそ嗚咽に耐えぬという物語のクライマックスは出来栄えよし
読ませるパワーのあった1冊でした。
ある意味、テンプレートを外さない、昭和成り上がりストーリーだからこそ、素直なストンが得られるのかな。