強欲な羊

美輪和音・東京創元社

ゾクッとするイヤミス連作短編集。「着信アリ」の脚本家でもある作者は初読み。

●強欲な羊
デビュー作にして表題作。独り語りは恩田陸「Q&A」とかのテイスト。
登場人物は多くなく、誰が加害者か、誰が被害者か、の叙述トリック。
でも読み返すと、だったら妹は何故?と思ったけど、そうかそうか、長姉がそう誘ったのか。
悲劇の地は、この後の物語の舞台装置となる。

●背徳の羊
それはそうとして、というお話。真犯人が挙げられた後に、ミスリードで怪しかった人も実際にクロだった。というのは面白い。
取り替え子は芦沢央「貘の耳たぶ」テイスト。
サバサバしている聡美さんが、一服の清涼剤。イメージは、ヱヴァンゲリヲンの葛城ミサト。
チコさんがこの後オールスターに登場。

●眠れぬ夜の羊
この辺から怪しくなってくる。恩田先生のスピリチュアルな扉みたいな感じか。
須藤文彦の年齢ミスリードは、歌野晶午の「葉桜の季節に君を想うということ」を想起。
その文彦の方がマシだ、と言われた時に凶行に及んだのかな。時系列がやや分かり難い。
お母さんを置いて、旅立てたのかな。

●ストックホルムの羊
まぁ、これはタイトルのミスリードみたいなものか。
ちょっと力業だけど、まぁ強引に持ってったね。急に世界観を変えたのかと思いきや地続きの世界。
あの窓の外には何があったのか。

●生贄の羊
これはもう「着信アリ」の世界でオカルトホラー。解は無い。
ただ、これまでの4作との連環を楽しむって付録かな。

うーん、まぁ企画賞って感じか。面白くないとは言わないが、「強欲な羊」のストンが一番鮮烈だから徐々に尻すぼみな印象。

(21/02/09)


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