ネタバレ読んでる間の感想。 ■コーキの小説で人が死ぬ■ 強烈だったはずの冒頭のインパクトが、後半には薄らぐ。そもそも忘れかけていたよ。 環が目にした自殺のニュースで、過剰にコーキを心配するのも違和感。その手のニュースはこれまでにだってあったろう。 作品の中枢をなすべき、あの事件の存在感が中途半端。だったら、環や加々美がその生き残りなのか? と想像したのは当たらずとも遠からず。 加々美はその事件の犠牲者の恋人になりきり、コーキを恨み執着する事で黒木の目に止まったんだろう。 加々美もまたクリエイターとしてもがいて、環が実母をネタに駆け上がったように、何かきっかけとしてコーキを利用したに過ぎないと。 ■芦沢の役回り■ 芦沢からスーに仕事を持ちかけるのは環の仕掛け? でもそれは彼女が忌避するおせっかいそのもの。もっとも五十嵐宅に押しかける時点で十分におせっかい。 自分の好きな人が不幸になるのを黙って見てられないって? 芦沢がスーに明かした環の作品の位置づけ。 それはスーが持っているものが弱さなのではなく、強さと優しさなんだと言う本質を見抜いていた事を、芦沢に託して伝えたかったのか。 それでスーの復帰? ■環とコーキの恋模様■ 環→コーキの恋心、そのコーキは環→拝島と思っている。コーキは加々美→コーキも否定している。 自らに向けられる恋愛を拒絶している? かつて環・桃花の姉妹を陰から見守ったコーキは、環が愛情を注ぐべき存在が拝島に取って代わる事を応援しようとしたのかな。 でも環のキャラだと、過去のコーキの行動がばれたらどう思うんだろう。 狩野と桃花の恋は伏線なくアンフェアで、そこから裏事情が透けてしまうと言う読者への種明かしもちょっとご都合主義。 ■偽コーキが加々美莉々亜だとして、加々美をスロウハイツに招いたのは誰の意図か?■ 上巻のラストで届いた原稿はてっきり偽コーキ(鼓動チカラ)の「ハロー・レイチェル」ものかと思ったけど、 コーキが脱帽するほどの別の作家(幹永舞)の「ダークウェル」の原稿か。 でもそれも環の仕掛けた罠だったり? 正直に読んで良いのか分からない。 下巻の冒頭の環と黒木の言い合い辺りで、偽コーキの正体は加々美だろうと早くに想像できたけれど、その真意は最後まで分からなかった。 1)黒木説:普通に考えたら環がさっそく噛み付いた黒木が怪しい。コーキの先を描かせる為に原稿盗み見させるため送り込んだか。 この際、天使かどうかは別問題。ただし加々美にコーキ並みの画力があるかどうかが問題。原作者に成り代わり、別の誰かに描かせてるのか。 加々美がコーキのお陰でスロウハイツに入居出来たのをありがたがるのは単なる演技? 2)コーキ説:天使に会いたかったのは事実なはず。作品を書けてしまうけれど、誰かに引き継いで隠遁したいとか。 3)狩野説:そんな権力がないので却下。 4)長野説:これも権力が伴わないので却下。 5)環説:まず加々美=天使を知っているとして、コーキの願いを叶えるため⇒おせっかいは環の忌避するところだから×。はっぱをかけるため⇒上位者コーキへの態度ではあるまい×。では加々美=天使を知らないとして、でも知ってるから狩野からの紹介TELで名前に驚いたんだよね。 ★これは結局、黒木の作戦だった訳だ。コーキに恋愛感情を持たせて作風を変えようと。更には最近打合せ頻度が減った黒木は、「レディ・マディ」のネームを早く入手し、プロモーションのため偽コーキ(鼓動チカラ)を用いたと。やっぱり描いていたのは加々美である必要がないから、外の作家だったのかな。 ■加々美は「コーキの天使ちゃん」なのか?■ 加々美が天使なら、何故カガミ姓の新潟県の女子高生が見つからなかったのか。加々美莉々亜は本名ではない? その場合、鏡のイジメも嘘?それとも「鏡」ではなく「ミラー」にまつわる名前なのかな? 加々美が天使じゃないなら・・・、環ときたか。それもわざわざ“各務”と言う姓までもってきて。 なるほど、入居者として電話口で「カガミリリア」と聞かされた時の心中いかばかりか。 ■各キャラクターについてひと言ふた言■ 【環】 埼玉と茨城を結ぶ電車なんて無いんじゃないか? と思ったが東北線(宇都宮線)が栗橋と古河を結んでた。 環がコーキに出会って即、スロウハイツ計画を実施したとして、よくもまぁ、コーキに積極的に働きかけたもんだな。 環が加々美を姓で呼びたくない理由は、自分の旧姓(各務)と同じだから。 各務は父親の姓で、赤羽は母親の姓なのね。あれだけ母親が嫌いでも姓は赤羽か。ま、父親も嫌いなんだから仕方ない。祖母は好きだったんだし。 スーに働かなくても良いと甘かった環だが・・・ 環がスーに世話を焼いたのは、祖母の死やデビュー時にスーがくれた思いへのお返しだったのか。 五十嵐のために絵を描くと言うスーに捨て台詞を残す環。でも結果、その強さを容認したのでは?五十嵐のキャラには確かに言い分あるが。 環からのプレゼントの掃除機を大切に使っていた母親のエピソードの意図は??? 【狩野】 環が現れ、仕事道具をしまう狩野。canやable誌での仕事(エログロ?)原稿か。 環が狩野に闇が無いと酷評したのを、どう思って聞いていたのか。 環がコーキを好きだと知っていて、環のコーキへの思いを探る狩野。加々美が天使ちゃんとして入居している事にも胸を痛めている(でもこれは勘違いで、加々美は天使ではない) 【コーキ】 スーと正義の会話で、コーキの仕事のペースは速いのに忙しい理由。それは「ダークウェル」も書いてるという伏線か。 正義が語る「愛=執着」説を、元ストーカーのコーキはどう聞いていたのか。 仕事で出会い直したコーキはどんな気分で環からの作品の感想を聞いていたのか。 子供大人なコーキはジェネラル・ルージュか。 エンヤの引越しを手伝うコーキ。手伝われるのは嫌いなのに? 正義に対して「ダークウェル」を絶賛するコーキの二枚舌。 狩野に天使ちゃんの正体を聞かれて、白を切り通したコーキも大したもんだ。 ■時系列の整理■ 16年前 狩野(小学5年)のトラウマ。 15年前 コーキ17歳でデビュー。黒木は22歳で担当を勤めてるって事は高卒? 環は10歳(小学4年)で母親が1回目の詐欺。石川から新潟の祖母の家に引越し。 10年前 コーキの小説で殺人事件が起こる。コーキ22歳で休筆に入る。狩野17歳。環(15歳:中学3年)がコーキ擁護の投書、この年に母親が2回目の詐欺。直後に祖母も死に、中学卒業後の環は埼玉の親戚に、桃花は茨城の親戚に引き取られ離れ離れの暮らし。 8年前 コーキは天使ちゃんの受けていたイジメから家庭不和までを見抜き旧姓カガミの転校生から赤羽環に辿り着く。環が高校2年生の秋に環の通う入沼市立図書館にコーキが寄贈。司書の一言でコーキが復帰を決意。アニメ化再開後、駅にテレビも寄贈。クリスマスにコーキの仕組んだオズのケーキを喜んで食べる。数年後(=2年後)に高校卒業とも整合性あり。コーキは環から直接お礼を言われたのを嬉しくも思い、自分の逃避の文学から普通に羽ばたいて欲しくもあり、ストーカー行為はこれで終えて執筆活動に戻り連載再開した。 また環は高校時に、恐らくチヨダ・コーキを読んだ事のない同級生からの批判に怒ったエンヤに目をつけている。 6年前 大学3年生の狩野と、大学1年生の環の出会い。狩野はすぐに桃花も紹介してもらう。狩野と正義の出会い、その2ヵ月後にはスーと正義の出会い。 5年前 環が大学2年時に母親が交通事故で死亡。 4年前 環が大学3年時に母をネタに脚本家デビュー。 3年前 正義が専門学校を卒業。その後フリーター。 2年前 この頃コーキと環の出会い。「お久しぶり」発言はその後数十年環から苛められるNGワードに。環がスロウハイツ計画を実施。桃花はまだ大学2年生。その頃から狩野と桃花は付き合ってる。環は狩野の作品に涙する。 3ヶ月前(1月か) エンヤが1年半のスロウハイツ生活を止め出て行く。 いま 黒木37歳。コーキ32歳。拝島28歳。狩野、正義は27歳。スー26歳。環、エンヤ、加々美は25歳。桃花22歳(大学4年?)。五十嵐20歳。 8月に加々美が入居。(直前の7月がスロウハイツ満2年目) 10月初旬 スロウハイツに届く「ダークウェル」の原稿。 11月27日 コーキと狩野がスーの展覧会へ。環は拝島とのデート。 冬 スーが出て行く。正義は「鋏虫」を上映。 明けて1月 環が「ダークウェル」の原稿を皆に突きつけて正体を迫る。 環が五十嵐宅へ押しかける。 2月中旬 コーキが芦沢の夜の写真を使えない事に、環の怒り。怒りのTELは芦沢と黒木に。加々美にも話をしたいと持ちかけ、チハラトーコとしての正体を迫った。加々美が天使ちゃんを装っているが偽者だと知っている環は、それを黒木の差し金と推測。チハラトーコの復讐者としてのキャラは看破し、その上でコーキの側にいて欲しいと懇願し加々美に土下座する。好きだから。加々美からは呆れられる。 2月 試験を受けてる桃花。4年生の2月なのだが。教員試験ってこと? 桃花と狩野は環からコーキへの恋心を慮り、天使ちゃんとして現れた加々美の存在に胸を痛める。ところが環とコーキの当人同士は加々美が天使ちゃんじゃない事を知ってるんだな。 環が黒木につきつけたリサーチ会社資料は鼓動チカラの正体が加々美であることだっけ? コーキが芦沢の写真を使えないと知った直後に、環が芦沢に文句のTELを入れたと見せかけ、スーへの仕事を依頼していたのか??? 芦沢はスーに環の映画を見せて、改めてスカウト。そしてスーは五十嵐の家を出てスロウハイツに戻ってくる。 季節は冬から春へ 「ハロー・レイチェル」の作風が変わってきたのは、鼓動チカラが加々美から環に替わったから?それで加々美は自身の小説再会? 4月中旬 拝島は狩野のカフェオレで見送られ退場。これが最後とは地味だな。 環の義弟登場。訪問時に各務姓を名乗ったので、スーが加々美の家族が来たと思う伏線あり。 父親に会いに行った夜、狩野に来年秋の渡米を告げる環。次の7月でスロウハイツ満3年。狩野から、コーキへの思いを告げなくて良いのかと聞かれて、素直に応えない環。その環を見て「偽善者」と捨て台詞を残し姿を消す加々美。これは黒木の指示だったのか? 環は「ハロー・レイチェル」の原稿を黒木に渡す。帰り道に遺書を残した自殺のニュースを見て、うろたえコーキの元へ急いだ環。環はコーキに逃げる事を促すがコーキは逃げない。これって、その環から天使ちゃんとして勇気付けられたから? 正義の「鋏虫」が好調。スーも芦沢と仕事をしている。 コーキの主催した夕食会で「ダークウェル」の作者が自分である事をカミングアウト。環はそれを黒木に頼まれた自白だと推測し「優しさの方向を間違えてる」と次げる。 環が過労で倒れ執筆中の「ハロー・レイチェル」の原稿をスーが発見。皆で手分けしてクライマックスの原稿の完成に取組む。エンヤも呼び出され、今度結婚する事を報告。狩野がcanとableで仕事をしている事も正義のセリフで明らかになる。 数週間後に環が回復。スロウハイツの住人皆が来年秋での退去で合意。 翌年夏まずコーキからスロウハイツを去る。環との出会いから4年目。郷里福島に戻ってやり直す決意を固める。 スロウハイツを出てから2年後、海外の映画祭で環が脚本を勤めた映画が出品され話題となる。 スロウハイツを出てから3年後、狩野はスロウハイツに戻り桃花と生活を始める。スーと1つ年上の宇佐美君が出会う。 スロウハイツを出てから4年後 夏 スーと宇佐美君は福島のコーキ宅を訪ねる。 11月 正義の「ステキ ナ フタリ」の舞台挨拶。スーと狩野が映画館に。桃花が小学校教師になっている。エンヤは娘(小春)の3歳の七五三で来られず。コーキと黒木は渡米し環に脚本を依頼。