スマホを落としただけなのに

志駕晃・宝島社文庫

結構話題になった一冊。『このミス』大賞2017隠し玉だそうで。
なんでも著者は在京ラジオ局勤務なんだとか。

SNSに関連した犯罪は現実にも多く、特にタイミングとして座間市の9遺体が報じられたころに読了したので
どうしても重なり合わせて考えてしまう事が多かった。
SNSは便利であり、もうスマホ以前に引き返す事はできないだろう。
犯罪の温床になるからSNSを廃止・規制せよ、というのは暴論だけど
だからこそ自衛しなくてはならないのだ。
ミクシィ、ツイッター、フェイスブック、インスタグラム・・・
いろんな繋がりはあれど、SNS上に個人情報をさらすのはスクランブル交差点に財布を置いてくるようなものなんだろう。

ミステリとしては、A、B、Cそれぞれの視点で展開し、最後にどんでん返しが2つ仕掛けられている。
ネタばれで良ければ、犯人≠浦野と、麻美=美奈代の2つ。
でもね、やっぱりそこはご都合主義がありまして。
美奈代がどうして武井の過去をあれだけ語る事ができるんだろう。
サークル同期でルームメイトだから、いろんな話をしたという伏線はあったけどさ。

実は、この話は家族の話じゃないかと思う訳。
犯人も過去にネグレクトというトラウマがある。
美奈代がAVに出演することになったのも家族から十分な援助がもらえなかったことが背景にあり
いざAV出演が明らかになった時も家族から救いの手は伸びなかった。
その他、池上聡子が生きているように偽装されたのも、留守電一つで生存安否を判断してしまい
会いに行ったりしないのが当たり前になってしまっている、そんな家族の在り方への警鐘の1冊なんではなかろうか。

(17/11/19)


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