闇金融とか、キャバクラ業界を鋭く書き暴く。
そんなキャッチコピーが(たぶん)似合う筆者。
だからこそ、最初の1冊は微笑ましい物にしようと思ったんです。
案の定、解説を読んだら同じ様な事が書いてある。
ブックカバーのイラストからして可愛らしい。
不器用な主人公のもどかしい様な恋愛を主軸に、男同士の友情だったり、親へのコンプレックスだったり、
なかなかに読ませる1冊じゃないですか。皆がハッピーハッピーで終わらず、主人公の一人が命を落とすと言う
哀しいストーリーではあるけれど、どこか温かい。不思議な小説。
個人的に幼馴染って憧れるんだよね。偶々、読み終えたのが出張帰りのフライトの中で、その出張先で20年前に通った
母校を見てきたから益々ノスタルジィを感じてしまうのか。
1章の最後でクロスの死を契機に、2章のラストで静香に言質を取られる辺りが筆者から主人公に与えられた陥穽なんだな。
春日豊と新山千影って何かの伏線かと思ったんだけどな。あの少女が実は有名人に・・・とか。
玉川署殺人課ってのもねぇ。あれはやっぱり鳴海父とか橘などの差し金と見た方が素直?
無粋とは知りながら、突っ込みどこも多いと思うよ。
そもそも、ラブラドールは本当に捨て犬だったのか?
まぁ、これが無きゃ話が始まらないんだけどね。
ラストシーンで静香がマリア公園にタイミング良く現れるのは何故?
あぁ、これも理由を求めてはならないか。
ハードボイルドにありがちな裏権力(これは新堂ワールドの真骨頂?)や、
何かと後ろ暗いケガを治すのに医師の友人がいたり、と御都合主義な設定もまぁ良いだろう。
深雪の失明は唐突過ぎるけど、最後の奇跡の伏線なら致し方なし。
満が深雪を受け容れる事ができるのか?と思うけど静香への憎しみ(恐らく、ね)の裏返しかな。
この辺も登場人物の大団円のためにはリアリティは二の次か。
これ背景には家族愛があるよね。
深雪の両親との突然の別れ。引き取られた叔父との望まぬ別れ。
桜木家では自殺とも思える母親の死による、喪失感と言う負の家族愛。
鳴海父子の確執は解けぬまま。
光三郎の跡取りはどうなったんだろう・・・
そして、女性は強い。
もちろん深雪は言うまでも無く、静香タイプの子もいるよね。
クロスを飼う事を許してくれた最初の叔母や、桜木を信じた橘の妻も然り。
純愛も楽では無いと言うことか。ならば、心置きなくどす黒い新堂ワールドを堪能するとしようか。