孤独か、それに等しいもの

大崎善生・角川書店

図書館の棚で偶々目にして、意味深なタイトルに惹かれて借りて返った。
帯も無いので、まったく先入観無しに読み始めたのだが、基本的に暗い。
短編集なんだけど、いずれも死をめぐる話。
現代社会のストレスや、孤独な都会人、そんなモチーフを描いたのか。
そのためか、登場人物たちの出身地を挙げているのがアクセントになってる気がする。

○八月の傾斜
青春時代に亡くした恋を忘れられない、そんな女性の恋心のハナシ?
彼と過ごした自分自身の姿が恋しい、それは女性心理らしいね。
ピアスの穴はそんな過去との決別だったか。
『僕の手の中の鍵は君の世界を広げるためのものじゃない』って言うフレーズはパクりたいね。
失った女性、って言うコンセプトで、恩田陸「まひるの月を追いかけて」の妙子を思い出した。

○だらだらとこの坂道を下っていこう
比較的ポジティブなハナシ。
変化を恐れず、それを受け容れて一緒に変わっていこう。

○孤独か、それに等しいもの
『あなたは私を傷つけることができる刃なんか持ってはいない』これもパクりたいフレーズ。
双子って、やっぱり他人には分からない何かがあるんだろう。
ただあんまり作中ではお見かけしないかな。恩田陸「ネクロポリス」のテリー&ジミーくらいか。

○シンパシー
不思議なハナシ。
20数年前の伊豆合宿から帰ったあと、石井礼子はなぜ自殺するのか。
仔犬の死や、弾の入っていないロシアンルーレットが意味するものは?
あの合宿は現在とのネガ・ポジにあると言う回顧なんだろうけど。

○ソウルケージ
過去との決別。
私も母を捨てるって辺りは東野圭吾「手紙」みたいな感じ。
過去は無かった事にはできない。
これも受け容れて、乗り越えていくしかないんだよと言うエールなのか。

(09/03/29)


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