朝日のようにさわやかに

恩田陸・新潮文庫

久しぶりの恩田陸。
期待していたのだが、タイトルほどは爽やかな気分になれない。
短編集はイマイチ盛り上がりに欠けるのだよ。
ショート・ショートは恩田陸じゃなくても結構。
恩田陸には、やはり作り込まれた世界観の中で重たい磁場に捕らわれてしまうくらいの作品を期待。
だからこそ文庫未刊行の「チョコレートコスモス」「きのうの世界」あたりの分厚いヤツは楽しみ。

以下、それぞれの物語への感想を。

■水晶の夜、翡翠の朝
理瀬シリーズの外伝。
憂理が生きてて、黎二がいない学園か。
それにしてもヨハンも大したこと無いな。これじゃ烏山響一や神前恵弥ら悪役キャラと伍していけないぞ。
理瀬はこの頃「黄昏の百合の骨」で同じく梨耶子を差し向けられて亘に救われるんだっけ?

■ご案内
阿刀田高みたいなショート・ショート。

■あなたと夜と音楽と
推理小説短編集で既読。この手のクローズドミステリーが性に合ってるんだろうな。

■冷凍みかん
これも読んだ事あるな。『世にも奇妙な物語』に出来そうなエピソード。

■赤い毬
「不安な童話」の潮騒、「禁じられた楽園」「まひるの月を追いかけて」の宗教と建造物への畏怖。
恩田陸の描く叙景的なシーンは、残念ながらよく分からないのだよ。

■深夜の食欲
恩田版『注文の多い料理店』って感じ?
ゴシック太字は、常野シリーズの裏返しか? とも期待したのだが。

■いいわけ
大統領の息子ってオチ? いや、落ちないし。

■一千一秒殺人事件
不条理と言えば何でもありか。
こう言うのが混じるから短編集は怖い。
いや、短編に限らず「禁じられた楽園」や「夏の名残の薔薇」なども裏切られた感があるが。
偶に混じる横文字は何か意味があったのか?
総じて、よく分からない。

■おはなしのつづき
切ないお話。
あとがきを読むと、当初はもっとカラッとした話をイメージしていたのだろうに。
児童文学には暗すぎる。

■邂逅について
全く分からない。
が、考えてみれば「三月は深き紅の淵を」もいい勝負なんだろう。第4章のエピソードの1つとして読めば面白いと思ったかも。
短いから、盛り上がる前に終わっちゃうから物足りないんだよな。
で、城が落ちて、淋しいお城に繋がるところに意味があるのか?

■淋しいお城
意味は無さそうだが、これもブラックな奇想天外なお話。
「みどりおとこ」は別の小説でも再登場するキャラクターらしい。
さほど引っ張ったところで、今ひとつ大きな感動は生まない様に思えるが。

■楽園を追われて
確かに普通の話。
だがオチも無いと言うのは酷くないか?
柿沢の遺稿は4人を集めるためだけの仕掛けだと言うのか。
当人が不在の同窓会。楽しかった、追われた楽園へのチケット。

■卒業
原稿20枚の制約を言い訳にしているが、他の人はどんな風にまとめたのだろう。
映画の予告編みたいな感じだから、本編で納得させてもらえなきゃ不満だ。

■朝日のようにさわやかに
表題作。うん。
これは、だからどうした?って話だな。
いや、これがありなら、小説家って何でもありなんじゃなかろうか。

恩田好きの私だけど、ちょっと辛口すぎたかな。

(10/07/04)


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