不連続の世界

恩田陸・幻冬舎文庫

「月の裏側」の塚崎多聞が登場。あの不思議な世界の続きなのかな。

多聞は恩田陸である。(秋元康 風)

“出だしが警句めいてる”なんて、まさに恩田陸そのもの。
毎回、ゾクゾクする序盤の出来には満足。ところがオチが無い。
まさに多聞のオチの無いハナシを聞かされている感じ。
多聞が抱いた、ロバートとは見ているものが違うのではないかと言う感想。
これはそのまま恩田陸と見ているものが違うのだろう、と感じさせられた。
恩田陸が見ている面白さに、私は追いつけていないのかもしれない。それが残念。
同じ小説に対峙しても、書き手と読み手で見ている風景は異なる。
多聞のキャラ設定は恩田陸そのものなのかもしれないな。
多聞の感想として語られてることは、恩田陸自身が感じていることなのかも。

そしてスピリチュアル恩田陸が炸裂。
注連縄と言い、「禁じられた楽園」を彷彿とさせる。が、あまり面白くないから残念。
ハイパー大和撫子の美加がどこまで崩れるのかが楽しみ。

そんな赤い犬の種明かしされたって分からんよ。してやられた! とはならない。
怖いモヤモヤした雰囲気を醸し出すのは良いんだけどね。残り2つも私好みではないんだろうか…。

おっと。楠巴は「中庭の出来事」では? 俄然興味深い展開にニンマリ。
これは悪くない。視覚トリックの密室には一応の解がある。
「黒と茶の幻想」であの4人がネタにしそうなハナシじゃないか。
このエピソード1つあっただけでも良しとするよ。
出雲夜想曲以来の山陰シリーズか。

そして黒田検事は「puzzle」か。関根兄弟とも世界がつながっているのか。
「月の裏側」とは連関していないと。なぜなら不連続の世界だから。
なるほど! これはストン。
実はで世界が反転はちょっと強引だけど、多聞のために忙しい中駆けつけてくれた3人の友に乾杯。
やっぱりこんな会話劇で不条理を語り合うスタイルが好き。

あとがき含めて後半持ち直した。やっぱり恩田陸が好き。

(11/12/03)


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