水を打つ

堂場瞬一・実業之日本社文庫

東京五輪招致おめでとう。本作では一足先に架空の東京五輪が開催されている。
競泳日本代表を舞台に、トップスイマーたちの進退をかけたレースが描かれる。
そして、レーザー・レーサーが一世を風靡した水着問題も取り上げている。

ミステリではないので、基本的にサクサクと読み進めれば良く、
ベテラン選手今岡を代表から追い出す形となった、新星・小泉の傍若無人な振る舞いの原因を巡って話は進む。
そこに水着問題が絡み、代表チームの雰囲気は最悪のモノとなり、新キャプテン矢沢が葛藤する。
アスリートは多かれ少なかれ自分自身との戦いなんだろう。
その中でチームマネジメントまで目配りできるキャプテンシーが求められる。
何で俺が、そんな矢沢キャプテンの声が何度も語られる。

個人との戦いなんだけど、敗れたライバルたちの思いを継いでいることを諭される小泉。
そしてそれは引退した今岡も同じで、コーチとしてチームに帰ってくる。
身重の奥さんを残してデンバーで交通事故にまで遭わされて、今岡はこの作品で踏んだり蹴ったりだ。

東京五輪も開幕してからは、ラストをどうもってくるのかを想像しながら読んでいた。
土壇場でキャプテンの矢沢にまで怪我の心配も出てくるし、
集大成のメドレーリレーの決勝に向かうあたりでラストにしてしまい、結果は想像にお任せ
なんてラストも想像したのだけどね。
まぁ、ミステリとは違って余計なストンを気にせずに、あのラストがふさわしかったのかな。

スポーツ選手の引き際は永遠のテーマ。
矢沢にも、いずれ小泉にも引退の時がくる。選んだ道なら、その時がくるまで悔いを残さずに燃え尽きろ。
実際の選手たちは2020年東京五輪まで、まずは地球の裏側リオデジャネイロで完全燃焼して欲しい。

(13/09/15)


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