逃避行

篠田節子・光文社文庫

飼い犬が事故を起こしてしまい、このままでは殺処分されてしまう。
一家の母親は家族よりも飼い犬を選び、逃避行に出る。
家族の在り方の物語なんだろう。

ただし物語が一本調子でイマイチ盛り上がりに欠ける。
困った度にお助けマンが現れて、次の展開へ進む。
元が連載小説だから已む無しか。
ラストの退場の順番が、ややストンか。

犬への偏愛も、対象を替えれば当世のモンスターペアレントみたいなものか。
その愛して止まない犬も、次第に獣性を取り戻すのは何のメタファーか。
これが実の子だとしたら家庭内暴力に通じるのか。

この作品の中では焦点が当てられなかったけど、一番大変なのは
加害者家族と被害者家族が隣家のままと言う訳にいかないだろうから
横田町四丁目からどちらかの家族は去って行ったのだろう。或いは両家ともか。
そちらの喧しさの方が、よっぽど大変な気がするのだ。

(14/8/28)


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