ブラザー・サン シスター・ムーン

恩田陸・河出文庫

だから何なんだ? だけど好きなんだ。そんな感じ。

文庫化されると薄いな。
第1部を読み終えて感じたのは、一人称の独り語りは嫌いじゃないが
まさかこのまま終わる訳じゃないだろうな、と言う心配。
支離滅裂なミステリよりは良いんだけど、あまりにも「だからどうした?」と言う展開。

人生のモラトリアムと言われる学生時代を物憂げな気分で回想する。
それができるのも、これを読んでるのが今だから。
学生時代を送っている最中に読んでいる読者や、学生生活を経験していない読者は
また違った感想を持つものだろうか。
それを考えると、知り合うタイミングと言うのは本も、人も、運命的なものを感じる。
似た様な感覚は「ノルウェイの森」にも言える。私は高校時代の読書感想文として初読したけれど
あのタイミングで手に取った奇跡に感謝したい。

地方と都会の距離感は、辻村深月「水底フェスタ」とまた異なっていて興味深い。
実際、こっちの方が若干近いのかな。
私も小学生時代は九州にいたり、実家は埼玉県だったりするけど、東京への畏敬は特に無い。
でも地方出身者の東京へのコンプレックスは、少なからずあるものなのかね。

本と映画と音楽。私の趣味嗜好にも近く、物憂げなまったりとした1冊。
大きな破綻もなく、好きな1冊に数えられる作品と言えよう。

(12/06/16)


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