ブラック・ジャックは当然「命」がモチーフになっている訳ですが、
奇麗事だけではなく、「いくら出しても良いから命だけは・・」という
スタンスがリアリティがありますね。
法外な値段に文句を言うクランケ(患者)やその家族に対して
「私だったら(親を救うのに)いくら出しても惜しくはない」等と
応えるブラック・ジャック。
彼は不発弾処理の失敗により、母親と伴に事故に巻き込まれます。
親子を救えなかった医学会に報復するために、自らメスを握ることを決意した
ブラック・ジャック。医師連名にも所属せず、免状無しでオペを行う
彼のスタンスはここに起因しています。
とは言うものの、彼は「救う」事を心情としていますが、
同業のドクター・キリコは安楽死が専らの担当です。
彼らの生命観についての議論は、深く考えさせるものがあります。
結論は一つではないのでしょうね。
私が一番印象に残っているストーリーは
豪華版6巻に収められている「2度死んだ少年(TWICE DEAD)」です。
父親殺しの罪で追われている少年が逃亡の際に、ビルから飛び降りて
脳死状態に陥ります。公判を受けるためブラック・ジャックの手術により蘇生しますが、
裁判の結果死刑が確定する際に、傍聴席にいたブラック・ジャックはこう言います。
「(私は、その子を)死刑にするために助けたんじゃない!!
どうしてわざわざ二回も殺すんだっ
なぜあのまま死なせてやれなかった!?」
他にも進みすぎた医学の引き起こす病気や、その進んだ医学でさえ
救うことの出来ない病気に対峙し苦悩するブラック・ジャックの姿は
まさに作者の身代わりだったのでしょう。
命への素直な飽くなき欲求。
命の大切さを、こういう形で学べるというのは幸せなことではないでしょうか?
文部省にお勧めしたいくらいですよ。