この世で一番おもしろいマクロ経済学

ヨラム・バウマン・ダイヤモンド社

初読みはとうの昔なのだけど、いろいろ文献を重ね読みした後での再読はまた気づきも多い。

マクロ経済学はミクロ経済学でできている。
ミクロ経済学で人々が最適化してるのに何故総体としてへまを起こすのか。
経済成長を説明する事と、経済崩壊を説明する事。
この2つの観点で、崩壊せずに成長するにはどうするか。
つまり長期的な成長[尺度:一人当たり実質GDP]と、短期的な安定[尺度:実質GDP]の両立を図る。
ただしGDPという尺度には問題もあり、市場経済ばかりを見て非市場問題を無視している。
また富の分配にはまったく考慮していない。課題はあるが無意味ではない。

金融政策は中央銀行がマネーサプライを操作し、短期的なマクロ経済の安定を図っている。
でも短期だ。長期的にはお金は中立と言うのが経済学者の立場。
長期トレンドでは、インフレとかデフレとか傾向が見られる。
軽いインフレが良いとされている。

財政政策は政府が税金と政府支出を使って短期の安定と長期の成長を促す。
ただし短期の財政政策は長期の政府負債の累積に脅かされている。
そして長期成長目標をどこに置くか、そのための介入をどこまで行うか、バランスが肝要。

※参考 古典派とケインズ派の見解が分かれるのは循環的失業。ケインズ派の発明が粘着性。給与は高止まりする。

経済学者にとって自由貿易は短期でパレート最適にならないかもしれないが、長期ではメリットが勝るので総体には恩恵を与える。
為替相場、ダンピング、いろんな問題は輸入面ではメリットとなり、そこから雇用創出の信頼(創造的破壊)がもたらされる
というやや楽観的な立ち位置から、貿易反対ならばデメリットを立証せよと主張。
保護主義をとらない自由貿易ならば、開発援助としても有効な手立て。
でも市場の失敗を見落とすな!

お金と信用を経済に循環させる金融システムは、自由市場に委ねると不安定。
かと言って過度な政府保証はモラルハザードを招き高リスクの活動を助長する。
金融政策と財政政策の二刀流で経済(金融システム)をコントロールしようとするが、いまだに景気の波は終わらない。

これからの課題、人口増加、高齢化、環境破壊といった問題点も
自由市場経済が解決してくれるかどうかは分からない。
社会保障の行き詰まりは、技術進歩の頭打ちを予兆しているのかもしれない。
道徳的に正しい事と、持続的成長の狭間で思案せねばならない。
100年後もミクロ経済学はほぼ変わらないだろうが、100年後のマクロ経済は潮流が大きく変わっているかもしれない。

(20/06/09)


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