七都市物語

ハヤカワ書房

同じ近未来をモチーフにした作品ながら、銀英伝と七都市物語では作風にかなりの 違いを感じます。
突然、地軸が90度転倒するという設定がまず凄い! 続いてオリンポスシステムだもの!
スペースオペラというよりはSFでしょう(何が違うんだ? でも違うよね)。

AAAもギルフォードも、これまた皮肉家で現政府に非協力的ときたもんだ。
田中作品は底流にレジスタンスを感じるな。現状に問題意識を投げかけるスタンスは
実は私の所属しているゼミと同一!!
あぁ、やはり私は入るべくして、今のゼミに入ったんだなぁ。

すみません。すぐ余談に走ってしまうな。
田中芳樹はオリンポスシステムというアイディアを「超近代戦を防ぐため」 と解説していました、どこかで。
ま、ICBM一発で戦争が片付いてしまえば描写も何もないですからね。
そこで、小型船艇や低空ヘリなどの兵器が活躍するんですね。
それにしても、田中芳樹の作品の戦闘は銀英伝もそうだが、いまいち平面的なんだよね。
三次元上の戦略があまり無いような気がする。宇宙上でも左右への包囲殲滅はあったが、
それを上下に回避するとか、第三軸(高さ)が戦略に活きてないような・・
珍しく「七都市」ではギルフォードがAAAのヘリ部隊を一蹴するのに、オリンポスシステムを利用した、
言わば上下の挟み撃ちを仕掛けましたね。

結構印象的だったのは、「ポルタ・ニグレ掃滅戦」のラスト。アンケル・ラウドルップの処刑の件かな。
為政者が失政を埋め合わせる手段としての、外征と粛正という歴史の常を取り入れている(?)あたりに
またも、田中作品のリアリズムを感じますね。

「七都市」は小説にも五編しか入ってないし、外伝も「田中芳樹読本」に収められているだけ
っぽいので、続編が待たれるところです。OVAも1・2巻は借りてみました。
セル画のイメージが少し違うなぁ。そして女性キャラクター(ギルフォードの副官:チェンバレン)の採用は
頂けないと思う。この作品って戦場の男臭さが、戦争の胡散臭さをシニカルに表していると思うんだけど。
リュウ・ウェイのとこのマリーンは戦場には遠いからね。

それにしても、リュウの持っている秘密は何なんでしょうね?
オリンポスシステムの打開策かね? OVA見る限りではそんな感じだよね。

あと気になるのは、小説の表紙です。恐らくオリンポスの十二神を描いているのでしょうが、
何度数えても十一体しかいないんですよね。皆さん数えて見てください。

それでは七都市についても、とりあえずこの辺でつぶやきをおしまいにします。

(97/10/07)


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