マヴァール年代記

角川書店

さすが「皆殺しの田中」だけありますね。激しく、そして思い切り良くキャラクターの命を消費してます。
マヴァール帝国だけでも諸国公はもとより、ラクスタ、アッセン、ヴォーダ等の忠臣もあまりにあっけなく
命を散らしてカルマーンの覇道を飾ります。

それにしても田中作品もパターン化してますね。特に銀英伝、マヴァール、アルスラーンは
キャラクターの設定が酷似してません?
先ずは、その資格なくして王位に就く主人公。
そして貴族階級の上流志向タイプの部下。いずれ彼は叛逆の道をたどります。
両者の間に立ち、苦悩する平民出身の部下。
銀英伝では、ラインハルト・ロイエンタール・ミッターマイヤーですし、
マヴァールでは、カルマーン・ヴェンツェル・リドワーンですね。
アルスラーンでは、アルスラーン・ナルサス・ダリューンと言うことになります。
「アルスラーン戦記」は完結していないのでまだハッキリとしたことは言えませんが。

「マヴァール」の特徴としては政争が割とメインで描かれている気がします。
でも、どう好意的にとっても銀英伝の縮小再生産という評価にしかならないな。
駄作ではないが、あまりに踏襲しているもの。同じストーリーをキャラクター名と
時代設定を変えただけでしょ。で、ストーリーの量はこっちが短いものだから
キャラクターに味が付く前に死んでしまうので、愛着も湧かない。
キャラクター殺しと言う田中流のリアリズムが裏目に出てますよ。

マヴァールで好きなキャラは?と聞かれても、ピンと来ないものな。
結構マティアシュとか好きだけど。渋いでしょ。
中間管理職的な板挟みがシンパシィをくすぐるんだよね。
アンジェリナがリドワーンと共に叛逆者となった兄を尋ねるシーンで
マティアシュと会話するじゃないですか、あの件が結構好きなんです。

あと、田中芳樹って太っちょな商人っていうキャラクターがいるよね。
銀英伝のマリネスク、マヴァールのホルティ、アルスラーンのグラーゼ。
こんな感じで各作品にまたがるキャラクター設定が最近鼻に付くのが
たまにキズかな?

(97/10/11)


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