創竜伝

講談社

過激だなあ。日本っていい国だよ。ここまで政府を辛辣に皮肉ってる作品もないだろうよ。
好きだけど、そういうの。特に続君の皮肉は良いね。あの口調で恬淡と語られるとさ。
もっと早くこの作品に遭遇してたら、口調とか真似してたかもね。今からじゃ無理だけど。

そんな訳で一番好きなのは続君です。しかし、法にうるさい竜堂家(特に始)ですが
続も、茉理ちゃんも未成年者ながら飲酒してますよね。終君の飲酒には口うるさい始が
2人に対してその件で怒ったのは見たこと(読んだこと)ないな。不思議です。

それにしても、田中芳樹は何処で勉強しているのでしょう?
組織機構の細かい知識や、法律の重箱の隅をつつくような指摘など
読んでてためになることが多いですよ。田中作品の中でも
現代日本が舞台です(だった?)から、ネタが身近で良いですよ。
それにしても、香港も返還されたし、ソ連が崩壊したりで
現実のスピードに合わせるのが大変だ。みたいな事を言ってましたが
本当にそのとおりですね。そのうち田母沢みたいな医学者が強化人間を
作り出してもおかしくないですよ。

創竜伝は傲家の物語りでもありますが、あちらの方がメインになってくると
ちょっとね。嫌いじゃないし、読んでて面白いけどせっかく現代日本が
舞台だったのに残念です。それに作者が中国に詳しいのは分かるけど
知識自慢みたいでちょっと鼻に付きますよね。

第5巻の外伝でも最後に綾小路良をギャフンと言わせるに当たって
諸葛孔明を持ち出して「姓名と字を一緒にしない」云々ってのはねぇ。
名雲相手に大人顔負けに張り合っていたのに、突然拍子抜けするような
「地脈」がどうのこうのじゃ、オチにならないよ。

たまにあるんだよね、田中作品では。引っ張っといて落とし所が妙に軽いって事が。
それが気になるな。創竜伝では、そろそろ小早川奈津子も飽きてきたし
あまりにコミカルすぎません? ランバート・クラークと始の最終決着のシーンに
紛れ込んだのは悪ふざけって気がするし、彼女に殺された黄大人らは悲惨ですよね。
それは「皆殺し」の意味が違うよって気がする。

これも完結しないことには何とも言えないな。
田中作品は完結してから買おうと思っていたんだけど、待てずに買い始めたのが
去年の夏あたりかな? 読み始めは面白かったが最近の評価はいまいちです。

(97/10/11)


白い本棚(田中芳樹作品)へ戻る

私の本棚へ戻る

タイトルへ戻る