2020積読解消シリーズ第二弾。こんなお話だったとは。
登場人物はごく限られている。父子と母子の4人。そして鍵を握るのは救世主。
闖入者に対する嫉妬心。他社を貶める事でしか自己の立場を確保できない歪んだ世界観。
子供を叱れない父親。遠い幼いころの自分の写し鏡。
自分自身の幸せを求める母親。依存の対象が息子から目の前の男性に変わってしまい、子供のSOSを気付けず恥じ入る。
やっと自分自身で開いた新しい世界の扉。それもあっという間に蹂躙され、希望の高みから絶望の谷へ突き落されてしまう。
自分を取り巻く世界を変えられるのは自分ではない。そう思ってしまうと辛い。
辛ければ逃げても良いんだよ。周りはそう言うかもしれない。逃げたんだよ。精一杯逃げたの。それなのに世界は変わらなかった。
せめて自分だけの居場所があれば。
コロナ禍の世界で、ひょっとしたらゼロとイチの先に希望の糸がつながっている人もいるかもしれない。
ただしSNS上で新しい確執も生まれ、それがトリガーを引くこともある。
難しいよ、この世の中は。
最後の数行に、フーパーの勝利感が描かれ、そこを後味の悪さと挙げる感想も多かった。
私もそう思う。恐ろしさにゾッとする。
この物語のあと、一人を失った三人は新しい生活を営むことができるのだろうか。
その三人の生活が地続きで存在すると考える方が私には怖かった。