怖がられてしまった男


いたずらに気を持たせていたかもしれない。
やっぱりだめだ、愛せない。
「ねぇ、俺の事、どう思ってる?」
その、あせった顔で、情けない。男でしょ。
この言葉で一気に覚めてしまった。
まじめに考えてはいたんだよ。あしらおうなんて思ってなかったのに。
もう、これ以上保留は駄目ですか。ごめんね。
好きになれるかなって最初は思ったけど、駄目みたい。
私はこれで終わらせたつもりだった。けど。

この物語はそんなに甘くできてなかった。
この女性の先輩はどちらの見方か分からないけど、時々来てはこんな事言ってった。
「ね、話し合いだけでもしてあげて、」
「1回だけ話し合えば済むんだし」
いやだ。あんな待ち伏せしたりする人。
先輩は「しょうがない子ね」といった顔ですぐ引き下がってくれた。
同じ部署の男性の先輩は私の見方で
「まだ、待ってるね。気を付けたほうがいいよ。送って行こうか?」
と言ってくれた。私はタクシーで帰る事にした。
駅で降りて電車に乗り換えようと思ったけど、恐かったのでそのまま自宅まで行った。
それからしばらくは周りのみんなに気を使ってもらいながら、過ごしてた。
なんで、こんなことになったんだ。
どうすればよかったんだ。どうすればいいんだ。

ある日、仕事の帰り、友達のやってるスナックに寄り道してた。
だいぶ遅くまで遊んでたけど、平日の真ん中の日だったので、いいかげんにして帰ろうと、
店を出ると奴の車が停まってた。
私は急いでまた店に引き返した。引き返して、でも説明できなくて。
「もう少しいる。」って言う私を不思議そうに友達はしてた。

そんな大した事件じゃなかったつもりなのに。
交際申し込まれて、断った。それだけなのに。
大袈裟に逃げ回る私につられて大袈裟に弁解しようとしてた奴。

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