タイミングだけが悪かった彼


マンションを探してた。適当に見つけた不動産屋に入った。
たまたま担当になった彼はものすごい美男子だった。
いや、いくら私でもいきなりは何も考えてなかった。

「じゃ、部屋を見に行きましょうか。」
という事になり、私の付き添いの友人と3人で車に乗り込んだ。
ちょっと気になる事ができた。私はトイレに行きたくなった。
なかなかタイミングが会わず、頭の中はそればかりになってくる。
もはや、彼が美男子である事などどうでもよかった。そればかりか、
自分のマンションを探すという大事なこの時であることも、なんかわかんなくなってた。
「どこかトイレはないの?」
ずっと言ってるのにつれてってくれない。
「あと1件見ますか?」
私はトイレにいきたいんじゃ。
やっと店に帰ってきて私はすっきりすることができた。
何がどう気に入ってこのマンションに決定したんだか解らないうちの決定だった。

引越しが済んで、箱の中身を整理してた時、不動産屋の彼から電話がかかってきた。
「今からご飯食べに行きませんか?」
あぁ、世の中には不動産屋が食事に誘うということもあるのか、と思った。
おもむろに焼肉屋につれていかれた。何でも決めてくれるんだ、この人は。よく言えば。
言い方を変えれば何でも自分で決めてしまうんだ、この人は。
このマンションだって、あの時、私が他の事に気を取られてなくても決まってたんだ、きっと。
焼肉食べながら聞いたんだけど、彼の自宅の裏に私の新しいマンションがあるらしい。
その時、私が毎朝ジョギングしてる事も何かのついでに話にでてた。
次の朝、5:30に彼が迎えに来た。さすがにびっくりした。けど一緒にジョギングしてしまった。
次の朝もその次の朝も。少しだけ、
(もしかしてこの人私に気があるのかな)
なんて思った事もないわけじゃなかったけど、ほとんどはその辺の事に関しては気にしてなかった。

今の私はその時の私に「何しとんねん」とつっこみたい。
不動産屋の彼はほとんどの時アポ無しで訪ねてくる。
その夜もいきなり訪ねてきて、今、旦那になってるこの人と鉢合わせした。

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