私を捨てた人


平均で、女を29年やった人では、何人の人に失恋してるんだろう。
多分、私は好きになった人の数でいうとかなり多い方に入るとおもう。
その分、失恋の数も多いわけで、よく、「悲しみが多いほど人には...」なんて言ってくれる人もいるけど。
わたし、もしかしたら、失恋って好きなのかもしれない。
失恋って快感なのかもしれない。
だって、何人の人に失恋してもいっこうにやさしくなれない。

飽きられてしまっていたらしい。私と同じ部屋にいても他の女からの電話を切らない。
こういう時って怒っていいのか、知らん振りしてた方が賢いのか、そんな知恵はまだなくて、
こんなイヤな状況から早く逃げ出したかった。
けど、飛び出したりとか、攻撃したりとかはなにもできなかった。
電話が切れたあと、二人は何事もなかったかのように時間を流そうとした。
とりつくろう事は出来なくて泣き出してしまった。
「なんで泣いてるの?」
しらじらしく聞かれて、(やっぱりこれは大した事ではないんだ)と自分に言い聞かせて見た。

訪れた終末に取り乱した生活の毎日が繰り返される。
早く抜け出したい。私から別れを切り出さなければ、いいようにずるずると続くのだろう。
別れを告げる為にスクーターでいつもの場所へ行こうとした。
途中、一時停止無視でパトカーに追いかけられた。少し悪あがきをしてみたが、ついに捕まった。
捕まった途端、最近のつらさで泣きくづれてしまった。警官たちはただおろおろしていた。
その内、私の友人が通りかかり、私の泣いている理由を彼らに伝えてくれた。
警官たちは切符を切る事もせず、無責任にその場を去っていった。
その日の内に私は別れを告げる事ができたが、忘れる事は簡単には出来なかった。

数ヶ月後、また私達はよりを戻した。この12年間で私達は十数回という別れ話を繰り返した。

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