愛した人


死にそうだ。
安易にこんな言葉使っちゃいけないって
叱られそうなくらいのものだけど。
ここにおかれたこの身が、置き所のない、これがいやだ。
暑くて死にそうとか。
寂しくて死にそうとか。
腹減って死にそうとか。
クーラーかけたらいいにに。
遊びに行ったらいいのに。
ご飯たべたらいいのに。
なりっぱなしのFMがうるさい。
伸び放題のこの髪がうざったい。
なんとかしてよ。なんとかしなよ。
もう、死にたい。

「愛してる」って言葉は「死んでやる」と同じくらい使ってはいけない言葉だと、
私のほんの少ししかないポリシーのひとつ。
「愛してる」からそばにいて、とか、「愛してる」から私を愛して、とか。
後に続く言葉の代償になれるほど、私の愛は軽くない。
その言葉に気持ちさえこもってなけりゃ、
「あ・い・し・て・る」と口を動かして、声を出すのは、簡単。受け取る方も。
だから、ちょっとでも気に入ってる人にはあえて使えなかった。今まで。

愛してる。本当なんだ。ただ、愛してるだけ。
そのために何でもできそうな、何でもしてしまいそうな。
そうして、それがその愛する人の重荷にならないように、そっと気を付けて愛する。
この本当の重さに気付かれないように。わからないように。

めったに食べようとは思わないアイスキャンデーを買った。
ホンの一瞬だけだけど、こんなものでもちゃんと冷却してくれる。
すぐにまた、オーバーヒートしてしまうこのハートはいつまでもつだろう。

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