不倫をして見た奴


今夜は鍋にしようと思い立った。
ひとりでするわけにもいかないので、電話してみる。
今日の今夜というのも急な話だ。確率は3割だろうかね。
3人に電話すれば1人は釣れるか。6人に電話した。
一人もかからない。
こんなときは別に寂しくない。
鍋はまた別の機会にする。

今日の夜は空いているかと、電話が入る。
空いていたので、渋谷で落ち合う事にした。
女二人で飲むのって好き。
充分語り合った後にナンパされるパターンが好き。
8時に落ち合って、10時まで語って、ナンパされて、2件目。
相棒がそわそわしてる。私の話など、上の空だ。
何回も留守電を聞きに席を立つ。失礼な奴だ。呼出しといて。
「どう?最近は。話、進んでる?」
とりとめの無い質問のつもりだったのに、
意外な返事が返ってきた。会社の上司と不倫に落ちたという。
さっきから、留守電を何回も確かめてるのは彼からの連絡を待っているのか。
部屋で、ならない電話を見つめる時間が恐くて、私を誘い出した訳だ。
同情してしまった。
不倫がなぜいけないか、というのは、ここで文章にするほどのことでもないけど。
そんなことより、それが不倫である、が為にこういう狂い方をする、
この相棒が哀れだった。
だれも咎めないような立場なら、もっとゆっくりお互いを見つめあえるのに。
まるで、明日にでも地球が破滅するような、人類が滅亡するような。
時間をあせるから、きっと、相手のことなどホントは見えてないのだろう。
「やめなよ。」
って言えば言うほど火に油を注ぐのだろうから、
「ま、思う存分に」
と言った。

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