ペンをくれた人


誰からも好かれるのは、生まれつきなんかじゃない。
或る朝、目が覚めると世界中のみんながたまらなく好きになっていた。

初日は説明ばかりの一日。今日からのここでの生活を少し想像してみた。
また、新しく知り合った人達と気を使いながらご機嫌を取りながらなんて、うんざりした。
やめよう、友達を作るのは。私の事見ないでね。あわないもの。疲れるもの。
それより、ここに居るのがおかしいよね。そうだ。
明日からはもう、二度とここヘはこない。決めた時、隣の子がペンをくれた。
メモをとれということ?
「ある」
ポケットから、自分のペンを取り出した。
「あぁ、そうなの?困ってるのかと思って..」
ホントに悪いけど...。

また、母親の泣きそうな顔。あなたのせいじゃないし、私は平気。
きっと、どこに置かれてもうまくやっていけると思うの。
自分が幸せになる方法、もう見つけたから、一足お先に卒業するだけ。
子供の頃から続けてきた音楽ももうずいぶんご無沙汰していた。
一度はさよなら言った海に、また通いだしていた。どこにも、私がいない。

いつのまにか、たくさんの時間が流れて、私が人の真ん中にいる。
あんなに、透通っていた体は赤や緑の原色に。
ひとつ、ひとつ、揃えてきた私のアクセサリ達。
生きるのがだんだん楽になってきたけど、もう一度だけ壊してみてもいいですか。

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