気疲れしない友人


手を繋いで歩くカップルを眺めていた。
私の隣にもこの人がいる。
手を繋ぎたい、けど、この人じゃない。
「付き合ってた時、手を繋いで歩いてた?」
手を繋ぎたいって思う気持ちの存在を確かめようとしてみた。
「うん。」
ごまかしたり、照れたりすることなく、この人は答えてくれた。
手を繋いで歩くカップルに視線を戻してみる。
うらやましいのは手を繋げる人と手を繋ぐ事が出来る時間だ。
手を繋ぎたくないこの友人に誤解されるかもしれないけど、
どうしても自分自身でも納得したい事があった。
手を繋げる人ってなかなかいないよね。
ほら、この辺にたくさん人はいるけど、殆どの人とは手なんか繋ぎたくないでしょ?
でも、手を繋ぎたい。手を繋ぎたい人と手を繋ぎたい。
手を繋ぎたい人って滅多に会えないよね。
「それってさ、あれみたい。原子」
わかってもらえるなんて期待してなかったから、
何を言ってるかすぐにはわからなかった。
「原子は手を繋ぎたがるんだよ。でも、繋げる相手は決まってるの。」
そうそう、繋げる相手は。そして繋いで初めて分子になれる。
「それでさ、繋いでないとすごく不安定なんだよ。」
そうなんだ。私はとても不安定な原子のままなんだ。
さんざん、ここの所している決心なのだけど、また決心した。
安定した分子になれるように、するべき努力をはじめよう。

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