面倒見のよい、私より強い人


一緒にいられたらよかったのにな。いまも一緒に。
同じ街にすんでいて、不思議とすれ違わないでいた長い年月があったのに。
こんな夜になんで同じ道を反対の方向目指してすれ違うんだろう。
お互いに連れている人はあの頃と同じ人で。

変わらないね。お互いに。

あまりにも変ってない姿の私達に、またあの頃のように毎日一緒にいれる日々が復活するかと思えた。
一瞬だけ。
すぐに、もう10年経った今とあの頃は結びつかない事も気が付いた。
それでもいい。また、私達の毎日を始めたい。始められたらな。
隣を歩いている彼に、もう無理だし、ナンセンスだと諭された。
あちらにもその意志があるのなら、それは素敵な事だけど、追いかけるだけならやめたほうがいいって。
私はあの子のとても素敵な部分を知っている。
あの子は私の持っている部分をとても好きでいてくれる。

嘘。知っていた。いてくれた。

だから、知りたい。いてほしい。

パチンコは18才になってから。
誕生日が少し早い彼女は18になっていたけど、私はまだ3ヶ月足りなかった。
まぁ、そんなに律義に法律を守ってる人もいないのでしょうし、その時の私もあたりまえの顔をして遊んでいた。
玉がすっかりなくなってしまって、隣の彼女の台を見ていた。
その台ももうすぐ終わりそうだったので、玉を買い足す雰囲気ではなかったから。
「じゃ、半分手伝って。」
そう言って私の台に一掴みの玉をよこした。
彼女も私も暗黙の会話で
(早くここを出てお茶でも飲もう)
と。
よくありがちな話で、そういう時は何かが来る。
待ち合わせの時間潰しのパチンコはなぜか入る、とか。
それで、一発、入ってしまった。
「ほぉ。」
複雑な心境でも、やはりとてもうれしい気持ちで台に微笑んだ私の手を、
店の兄ちゃんが止めた。
もらい玉。
ふいに、自分の体に他人がふれた驚きで顔が硬直した。
彼女はとっさに私の手をつかんで外に連れ出した。
「ふぅ。あやのはね、短気だから、大変。私。」

彼女の側で送る毎日のうちにだんだん私はいい子になることの理解ができてきた。
いつもいつも「あやのはすごい。」って言ってくれてた彼女の言う事は私のなかで絶対になっていた。

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