夕方、東京を出発して、夜更けに関空を出発して、機内食を食べながら3時間しか経ってないのに、また朝が始まってしまった。 レンタカーを借りなければ...っちゅうのに、出国前に予約をしなかったのでどこも「ありません」って言われちゃう。 6人いるので普通の乗用車ってわけにもいかないのに、あるのはオープンカーのツーシートばかり。 3台も借りたりすると、滞在中はタクシーを使いまくってもそっちの方が安く計算できる。 なんだかんだで、車はGETできて、「タロフォフォの滝で、釣りしながら泳ぐんだっ」ってみなさん張り切ってた。 あやんは一回みたことあって、「およげたかなぁ。。。」って半信半疑で。 けど、記憶もあいまいなので強くは発言できない。道もろくに覚えているわけでもないし。 部屋で着替えを済ませる。窓にはお約束のオーシャンビュー。 この瞬間の為に、先週はいつになく忙しかったかのように、それが神様の粋な計らいだといわんばかりに。 いいのかな。いいのかな。 滝に向かう前に軽く食事をしたかった。 走っていればなにかある、と出発した。 マクドナルドがあってドライブスルーで、ってつもりが、意外とこういう所でKeepRightの国を感じる。 日本でも、右折から入ろうと思ったら、店の向こう側から入るようにロータリーの作りはなっている。 今回は左折から入るわけだけど、KeepRightの国では左折の時に店の向こう側から入る。 まぁ、とにかく、ドライブスルーの進行方向が逆だと、そういうわけ。 で、そのコースに乗れずにしょうがないんで駐車場に停めて、全員降りて、TakeOutで、ってことになったのだが。 それもなぜか、「TakeOut」の一言を言わずに、誰もそれに気付かず、着席して、「さて」ってときに、「??」となった。 どうやら、珍道中のはじまりのようだ。 お腹も落ち着いたので時間ももったいないし、さっさと出発する。 車内では1人が運転し、3人が地図を広げていた。あやんと平川君は景色を見てた。 いいのかな。いいのかな。 なんて、ホントはよくなかったらしい。方向を間違えて逆に走っていた。 引き返して、いままであやんの見ていた窓には海岸線だったのが、店が並ぶだけの景色になってしまった。 その景色の中に「イルカと泳ごう!○○ダイビング」という看板が飛びこんできた。 すっごく惹かれたのだけど、団体行動なので自己主張をしない程度に報告しておいた。 そのうち、ずいぶん前に横井CAVEを見に行ったときに通った道の記憶が蘇った。 まさに、この道がそうなのだ、とはっきりわかった。 あの時は、どうして楽しくなかったんだろう。 滝への道が細かく書いてある地図がなくて勘をたよりに行かなくてはならない。 そろそろ曲がるはずだというあたりで一つの道に見覚えがあった。 その入り口にるガソリンスタンドにも、その横に車を止めるスペースがあるのも、 その道の奥になにやら未知を感じる不思議な雰囲気も絶対そうだった。 一度、通り過ぎてしまったので、引き返してもらった。 ガソリンスタンドはコンビニエンスストアのような店を併せているはず。 確かにそうだったので、古谷さんにお店の人にこの道が滝へ続いているのか聞いてもらう。 「この道は違う」 と言われてしまった。でも、絶対、そう。 再び、車を進ませる。お店の人に言われたままに。と、「滝公園」とそのまま漢字で書いてある看板があった。 その看板通りに進むとさほど行かないうちに突き当たって、工事現場のような場所に入り込んだ。 プレハブがあって、中には麻布あたりで見かける種類の男性が二人と女性が一人。 入場料が$7。 この辺で、あの横井CAVEに行くにはツアー会社によって入り口が違うのだ..などと想像していた。 ピックアップトラックの荷台にあやんたちは乗せられて、車はものすごく急な坂を下った。 滝があって、そばにはおみやげ屋。 滝を見たとたん、釣りや遊泳ができる滝ではないのだ、とわからされて、ちょっとみなさんはがっかりした。 この店の裏側に「横井CAVE」があるという。 以前に見た時は上から降りて来たような感じだったが、今回は下から登る感じ。 ちょっとした、山の薮の中にそれがあって、前回降りて来た場所と、今回登っていく場所とは同じ場所なのだと信じていた。 ようやく、ここに来て横井CAVEはひとつしかないのだと思っていたのがどうやら違うらしい事に気付かされた。 その薮にはマンゴーだと思うが、オレンジ色の実をつけた椰子の木の種類の植物があって、 松っちゃんがそれによじ登って取ろうとした。あやんもそれを喜んで見てた。 素手ではもぎ取れなくて一度降りてきた。 にこにこしながら「ナイフ持ってるんですよ」とうれしそうにリュックをいじり、再びよじ登った。 この旅は楽しいに違いない。 せっかく滝へ来たのでその水には触れておきたかった。 足首までしかないなだらかな滝なので、歩いて入っていくと、松っちゃんはマジ面で心配した。 「滑りますよ」 ちょっと不満気な顔の古谷さんが 「もう、ええやろ。ビーチで泳ご」 と言って、そこを後にすることにした。 ものすごい坂をまた引き返してもらう為に、係りの人はいなかったのだけど、勝手に荷台にあがって大人しく待っていた。 売られてしまうのに、なにかに期待してわくわくしている子豚たち。 ってことはないが。なんか、おかしかった。 お昼ご飯の時間で、お腹も空いていて、時差を考えると腹時計はまだ午前中なのだけど。 引き返したりはしないで、車は来た方向と逆にどんどん進めた。 食事ができそうな建物を探してはいるのだけど、なかなか、グアムは田舎なのだなぁと感じた。 イタリアの時は店はたくさんあるのに、一食毎に2時間も探してありついていたことを思うと、 今回は極楽だ。30分もかからずに見つかったし。 みなさん、あまりぐだぐだ言わずに、「よし!ここにしよう!」と快く口にする。 いかにも日本人というおやじがいた。 ちょっとした冗談を言ったらものすごい理屈でやり返された。 そんな、まじめに返された時のことを考えてなかったよ。 で、パスタにした。 サラダにセロリが入っていて、さすがに、関西人の集まり。 なんともいえない表情を作って殆ど残していた。 あやんはセロリが大好きで、残されたサラダが欲しくてしょうがなかった。 言わなかったけど。 海をぼっと見ていたらくじらがこちらへ向かってきた。 ような、一瞬、気がした。ほんの一瞬で行動のコントロールが効かないくらい一瞬で、「あ、くじらが来た」とつぶやいていた。 平川君と松っちゃんがつられて外を見た。 1分ちかい沈黙があって、 「え?」 と聞き返されたときに我に返って、 「いや、くじらが来た...」 と答えつつ、初めておかしいことに気付いた。 もう一度、二人は外を眺め、あやんはこの状態をどう収集しようか困った。 出されたパスタがとても辛くて、結局食べられなかった。 旅先で食事が駄目だったときはたいがい不機嫌になってしまうものなのだけど、 今回は平気だった。 早く海に浸かりたくて、海岸線を流す車の中で、他の人の話も聞かずに波ばかりを見ていた。 雑誌でしかみたことのないようなきれいなブレイクがあった。 誰も遊んでない。ほったらかしの。あやんがサーフィンが上手だったら。 いつか、上手になったら、ここ、覚えておこう。 自然プールがあるというところについた。 岩の形がたまたまそうで、海水がたまっているだけのプール。 ローカルの子供たちが遊んでいた。 飛び込み台が設置されていて、小学生くらいの男の子がふたりと中学生くらいの男の子がひとり。 小学生のふたりが台の上から、下で見守っている中学生を見下ろしている。 勇気がいることだろう。かなり高い。 中学生が「GO!」と叫ぶのにつられて、私達も「GO!GO!」とけしかけた。 もう後には引けない。一人が足から飛び込んだ。 「ひゅーひゅー」 もうひとりはなかなか行けない。先に飛び込んだ子が 「Comon in Chiken!!」 と言うが早いか、「What!!」と叫びながら駆け出して飛んだ。 日本語で言うとなになのだろう。 えい!や!と一歩を踏み出しておけばよかったことがたくさんあった。 けしかけるだけけしかけておいて...というのではあれですので、松っちゃんのこともけしかけた。 (ほんとはあやんがやりたかった。) 松っちゃんは飛び込んでくれた。かっこよく、爪先から手の先までぴんと伸ばして頭から。 ここはローカルばかりでなんだか申し訳ないので別のところで入ることにした。 入口に魚雷が置いてある広い公園に面した海岸。 逆だ。海岸に広い公園が面している。 やっと海に浸かれる。 30mくらいつづく浅瀬のさきにブレイクポイントがあって、 頭くらいの波が立ちあがっては一気に落ちていた。 浅瀬は腰ほどの深さで、うかつに泳ぐと岩を蹴ってしまうので、歩き回るだけだった。 「〜サモアのしま楽しいしまよ〜。かぜがふ〜くぅ。静かなう〜みぃ。鳥がとぶとぶ波間をゆ〜く。らら、船出をいぃわい...」 のんきな歌がいつまでもいつまでも頭の中をまわっていた。 さっき見かけたダイビングショップに予約をいれることになった。 なにかのTVでいるかはダイバーとは泳いでくれないって聞いていた。 ダイバーの口からでる泡がきらいなのだという。 ショップではいるかとはシュノーケリングで、だと言われた。 ダイビングがしたいので、いるかはあきらめて体験ダイビングを申込んだ。 まだ、日が高かった。ラッテストーンを見に行く。 ここがハワイならもう少し観光の人らしい人影を見かけそうなのに。 静かで明るくて暖かい島だ。 やっと探し当てたラッテストーンは日本にもよくある公園の中に並んでいた。 英語で解説が書いてある石があった。 あやんも松っちゃんも、あまり得意ではないのだけど、読んでみた。 なにしろ、12個あるうちの4個がなくなってしまって、ここに8個ある。ということらしい。 こんなでかい石が無くなるっちゅうのはどんなことが起こったら無くなるのか... 車に戻ってガイドブックを見ると、なんということか、今見た公園とは違う所に立っているラッテストーンが載っていた。 横井CAVEのみならず... それからカートやら乗馬やら射撃やら、やりたいことがたくさんまだ残っていた。 水着のままだったので、一端、部屋へもどって行動を再開する。 乗馬をするにはあやんの靴がよろしくなかったので、スニーカーを買う為にマイクロネシアショッピングモールへ向かってもらった。 30分だけでナイキのスニーカーを買って、サーフショップを覗いてくる。 スニーカーは気に入ったデザインがことごとくサイズが無かった。 半年前、ハワイで100$くらいだったものが40$くらいに値下がりしていた。 今、店頭にならんでいる100$程のニューモデルも半年で半値以下になるのか... それでもニューモデルが欲しかった。 139$のものがキャッシュなら100$だという。 手持ちが120$。 いいやいいや、誰かに借りれるだろう、と決心したのに、これもサイズがなかった。 結局、サイズのあうモデルは2つしかなくて、あまり気に入らないデザインのニューモデルと旧モデルのまぁまぁなデザインのもの。 旧モデルのものを買った。 あと15分。 サーフショップのお兄さんは、てんで日本語が駄目だった。 「いち、に、さん」もわからなかった。 ブーツが売っていたので、このブーツはサーフィン用か、フィンの中に履くものかを尋ねて、 どうやらフィンの中に履くものだということになって、サーフィン用のものが欲しいと伝えると3件先に連れて行かれて、 そこで板を薦められてしまった。 ブーツはフィンの中に履くものでも欲しかったので買った。 ちらっとみかけたウェットも$200弱で、絶対買いだ!って思ったのだけど、時間だった。 他のみなさんはナッツとかのおみやけをたくさん抱えていた。 射撃場に乗馬コーナーもあってカートもあるというところに行った。 乗馬とカートはもう出来ない時間になってしまっていたので、 射撃だけすることにした。 コーナーには誰もやっている人がいなくて、すぐに出来るらしい。 ピストルの扱い方の説明を聞く部屋へ入った。 異常に緊張した。多分、今まで生きてきた中で一番緊張していた。 説明がなにも頭の中に入らない。 なにが気になるって、説明は教室のようなところで聞くのだけど、 あやんの後ろに座ってる人もいて、その人はあやんの背中に向けて練習してるのだ。 「〜を開けて、弾込めて、・・・ひじを伸ばして、はいっ」 って引き金引いたらなんかの間違いで撃たれちゃったりしたりすることはないのか... めまいがした。 説明もよく理解してないのに、いよいよ本番になって、コーナーへ入っていく。 緊張して、緊張して視界がいつもの3分の1くらいになってる。 耳当てをあてて、メガネをかけて、係りのお兄さんは 「リラックス、リラックス!」 ってやたらとリラックスさせたがる。 やっぱり、大変な事するんだろうな、これって。 どーやって、弾こめたりしたんだかわかんないうちに隣の飯田さんが一発目、行った。 確かに大きい音がした。 けど、想像していたほどの9割くらいの音だった。 あやんもさっさとはじめちゃえ、と一発撃ってみた。 えもいわれぬ感触だな。 的のどのへんに今撃った弾があたったのかは見えない。 ものすごい緊張とものすごい集中力で36発撃った。 一発撃つ毎に息切れするほど緊張して、集中して、夢中で撃った。 打ち終わって、的の紙を引き寄せてもらう。 見ると、なかなかいい線出してた。 宇野さんの紙をちらっと盗み見するとど真ん中に集中してた。 あんまりびっくりして、 「なにそれぇ!?」 と言うと、 「違うの、お兄さんがえんぴつで開けてくれたの」 と言った。 よかった。やっぱり、なんにつけ、あやんは一番でいないとゆるされない。 12人で撃ったなかで、成績発表があった。 一位は常連らしいお父さん。 360点満点中、350点程出していた。 2位はその息子。270点程。 3位はあやん。266点。 まぁ、これくらいなら許してやろう。 とりあえず、仲間の6人のなかでは1番だったのだから。 お腹も程よく空いていた。あやんは特にお昼ご飯を食べられなかったから。 夕飯を食べる。こないだのイタリアのことがまだ引きずっている。 今から食べるところを2時間探したらあやんは倒れてしまう... ところが、考えすぎで、15分後には着席していた。 チャモロ料理。 「とにかく、ココナッツミルクで炊いたらチャモロ料理。味噌や醤油で炊いたら日本料理」 と古谷さんが言った。 今回ははずしてない。おいしい。 おいしいけど、量が多いのでどの料理も均等にちょっとづつ残した。 店を出ると 「クルマハアリマスカ?」 と聞かれ、古谷さんが得意になって 「アリマース!」 と答えた。 食後にはドッグレース。 今日は、しかし、よく遊ぶなぁ。 一レース、様子を見て買う。 ゲートが開くと、ものすごい勢いで犬が走った。 早くて目も追いつかない。 ゴールを写真撮ろうとしたが、ぜんぜん、シャッターが間に合っていなくて、 誰も写っていないゴールの写真になってしまった。 オッズなどみても、名前など見ても、なにもぴんとこなかったので、 数字だけで、3−6を$3買った。 はずした。 次のレースからは買いに行くのがめんどかったので、ずっと座っていた。 眠気が襲った。 5年くらい前に見たハワイのポリネシアン文化センターを思い出した。 あれが楽しくなかったのは楽しもうとしなかったせい。 最終レース。やっと帰れる、と、飯田さんが 「1−5やね!」 と喜んでいる。さては、当てたな。 レンタカーを返しに行かなくてはならない。 今回は楽だった。一回も運転してない。 運転は好きだからしてもよかったが、前回のハワイ状態もまたまいってしまう。 あれもあれで、ひとりでドライブなら違ったけど。まるで運転手だったしな。 古谷さんは他人の運転は恐くてしょうがないのだ。 一度、平川君と交代したときは 「こわ、こわ、こわ、こわ」 ってカーブの度に言うからうるさかった。 古谷さんと平川君だけで車を返しに行くことになって、 あやん達は部屋でまっていることにした。 ふたりが帰ってくる前に飲み出すわけにもいかないので、がまんして待っていた。 松っちゃんがゴーカートをしたがってずっと言ってるので、 迎えには来てくれるのか電話してごらんなさい、と言ってあげた。 「迎えにはきてくれはるんでっか?」 松っちゃん、大学まで出てるんでしょう..そんなに強引に日本語押し付けて、しかも、河内弁。 3人ほどたらい回しされたらしく、さらには、「OK!」と言って切られたそうだ。 ちょうどいい暇つぶしにはなった。 明日の予定をああだ、こうだ、と練りつつ、飲まずにがまんして待った。 かれこれ、一時間も経つ。 少々、心配。 話題はふたりが何に難儀しているのか、ばっかりになってしまった。 スタンドの使い方...いや、グアムはスタンドにも店員がいる。 道がわからない...空港だよ? 結局、レンタカーの係の人がいなくて、散々待たされたそうだ。 ガソリンは入れずに返したそうだ。 道はもちろん、迷わなかったそうだ。 平川君はたくさん、ビールを買ってきていた。 「6缶で$4!」 って大騒ぎしてる。 宇野さんはあまり調子よさそうでなかった。 明日のダイビングはパスしたいと言い出した。 まぁ、グアムなら、ひとりで歩かせてもどってことないでしょうし。 さっき、飯田さんは$3が$100になってたそうだ。 一杯おごってもらわなければならないので、ラウンジへ移動した。 せっかくなのでなるべくトロピカルなカクテルを選ぼうと、みなさん、人の金のときの表情って奴でした。 なかなか、明日の予定が立たない。 すぐ、別の話題になるので、ときどき、 「ミーティング、ミーティング」 と言ってやらねばならなかった。 恋人岬の夕暮れが見たい。 ゴーカートがしたい。 馬に乗りたい。 ダイビングは、絶対するとして、 サーフショップに行かなきゃ。 どう考えてもみんなでぞろぞろ行動してたらこなせないのだ。 宇野さんはダイビングをパスするので、そのまま寝かせておいた。 ダイビングだ。わくわくする。 「しゃわっあうをっあびってぇ!うぉおうを!」 なんて歌い出しちゃう気分だ。 寝てるからできなかったけど。 出掛けに起こして 「行ってくるね、気を付けてね」 と言って出かけた。 あやん達のグループだけで船を出してくれる。 それはラッキーな事なのだそうだ。 ボートダイブがラッキーでさらに、チャーターがまたラッキーなのだそうだ。 ポイントに出かける前に手話の説明が有った。 射撃ほどでは全然無いが、緊張してきた。 朝ご飯をポイントに向かう途中のコンビニで買った。 スパムにぎりがあったので、それにした。 やたらとおいしいので、究明するべく、ごはんだけ、たくあんだけ、たまごだけ、スパムだけ、と食べてみた。 ごはんはパラパラしていて、日本人はおいしいとは言わないのだろうけど、 あやんはこういうのは好き。 たくあんはそこそこ。きっと日本から輸入してるのだろうし。 卵焼きがやたらとしょっぱい。これがどうやら、旨い元になっていると見た。 ポイントに着いて、ボートに乗り込む。 キャプテンがなかなかハンサムな白人さんだった。 すぐに着いて、ウェットを着る。 ウェットを着ると条件反射でストレッチをしてしまう。 ブーツは前日に買ったものによく似ていた。 ボディボード用も、ダイビング用も同じなのか... ひとりづつ入って、インストラクターから2,3指導を受ける。 平川君が一番に入った。次が古谷さん。 二人とも特に問題なくクリアしていた。 三人目の飯田さんはかなり問題あったようだ。 見ていて、あやんは 「そんなに難しいのか!」 と心配になってしまった。 しまいにゃ、 「ちょっと苦し!」 とまで言ってた。 あやんより松っちゃんの方が先に入る。 松っちゃんにキャプテンは 「耳。ギョーザになってますよ。」 とからかった。笑えた。 白人さんの口から「ギョーザ」という言葉がでたのがとてもおかしかった。 キャプテンと船上でふたり、残された。 キャプテンはいろいろと話し相手になってくれた。 2年ほど新潟でスノーボードのショップで働いていたそうだ。 なんだ、日本語しゃべれちゃうのね。 「あ!うちのいるかだ。」 とキャプテンが言った。 始めに申し込もうとしていたシュノーケルのいるかたちだそうだ。 これは、ラッキーな展開になってきた。 「昨日はゴンドウクジラ、いました。」 !やっぱり、いたんだ。 いよいよ、あやんも海に入る。 鼻まであるマスクなので、口だけで息をする。 これは思ったより難しい。 レギュから息をするのはもっと難しいかと心配した。 ここへ来る前に日本のダイビングショップでふとしたことでレギュから息を吸ってみたことがあった。 それが幸いしてたようで、息はしなきゃだめなんだよ、と言った感じだ。 うまく言い当てられないが。 で、ちゃぷっと顔も海に入れてしまうと、これは、まさに、想像していなかった世界だ。 TVで見たことあるきれいな世界がもっともっともっときれいに、現実にこの目に。 マスククリアの練習と外れたレギュの探し方をして、それから少しづつ、下に降りていく。 ちょっと潜っては耳抜き。 どういう状態になったら耳抜きして、どういう状態になったら抜けたということなのか、さっぱりわからなかったが、 深く潜るにつれて、耳抜きが必要な状態、抜けた状態もわかってきた。 そのうち、耳のまわりの筋肉が必要になると勝手に力が入って耳抜きをしてしまうことも感じた。 緊張してるはずなのだけど、景色がリラックスさせてしまう。 松っちゃんが海底で待たされていた。 あやん達が到着すると散歩を待っていた犬のように動き出した。 海底に海蛇のようなものが落ちていて、それが気になってしょうがなかったらしい。 実際、それが海蛇だとしたら、海蛇はとぐろを巻いていたことになる形だった。 でも、海蛇だったら!って想像してしまって恐くて身を固めてしまった。 インストラクターがそれを手でくずした。指で指す方向をみると大きなナマコだった。そういうことか。 松っちゃんはなまこを持ち上げて写真を撮ってもらっていた。 そして、あやんに渡そうとする。違うでしょう...いりません。 あやんはずっとインストラクターの手を放せずにいたけど、充分、この美しい世界を満喫していた。 松っちゃんはあやんのまわりを自由に遊泳していた。 いろんなものを触ったりしていた。楽しい。 インストラクターがソーセージを出した。 あやんは熱帯魚まみれになる。 熱帯魚まみれのあやんをインストラクターは写してくれてた。 手を放されちゃうとどこにも動けなくて、少し心細くはあるのだが、なんという空間なのだろう。 目の前に広がる大きな珊瑚礁の壁。 上をいるか達が通っていった。 その後、ビキニの人間達が通っていった。 くじらの声が聞きたくて、聞こえるかわからないけど、自分の呼吸の音がうるさいので一度止めてみた。 インストラクターがはっとしてこちらを覗き込んだ。 息を止めてはいけないと言われていた。 クジラの声は聞こえたらインストラクターが先に言うだろう。 あきらめて呼吸を再開した。 いつのまにか浮上していた。これでおしまいらしい。 どこをどう遊んだのかさっぱりわからなかったけど、楽しかった。 平川君にくじらはいたのだ、と教えてあげたが相手にしてくれなかった。 「もう、かんべんしてください。」 って。 ホテルに戻り、宇野さんと合流して昼食にする。 平川君がラーメンとうるさかったので、ホテルにある中華料理店に行った。 平川君はもっと大衆的なラーメンが食べたかったに違いない。 あやんは興奮したまま海の中の出来事をしゃべりまくっていた。 食事が済むとゴーカートへ向かう。 手際のいいことに、ちゃんと迎えの手配がしてあった。 先日のハワイや、イタリアとずいぶん違う旅になったもんだ。 手配をした松っちゃんを散々褒め称えておいた。 よっぽどゴーカートが楽しみだったようで。 カートは緊張することはなかった。 一時期、スリックカートにこった時期もあって、あれに比べると舗装されたコースを走るのはなんてことない。 一周のパブリック走行の後、各々のペースで走り出す。 平川君は調子にのって、第一コーナーでスピンした。 屋外のコースってのはこんなに気持ちがいいのか。 あやんはあやんなりに調子良く回っていたつもりが、松っちゃんがあやんのインを割って抜かしていった。 なんて奴だ!と思ってるそばから古谷さんまでインをかすめていった。 同じコーナーで二台も。。。インを。。。 あっという間に時間は過ぎてチェッカーが振られた。 ロビーに戻ってから、ちゃんとふたりには文句を言っておいた。 迎えに来てくれた人が送ってくれるというので、ホテルまででなく、途中のアウトレットでおろしてくれるように頼んだ。 ここのアウトレットはまだ知られていないようで閑散としたもんだった。 マイクロネシアショッピングモールと変わらない品揃えで、サーフショップもあった。 ここで用事は済ませちゃえそうだ。 サーフショップではさっそくウェットをチェック。 そんなに変わった体型してるわけではないので、つるしでいいのが買えるかもと思っていた。 なかった。メンズばかりだ。 防水仕様の小物入れを買った。 その隣にビデオも売っていて、そのなかのひとつが、パイプをスノーボードで抜けている柄のものがあった。 これはスノーボードなのか、サーフィンなのか聞くと店員は熱心にケースに書かれている文字を読んで、スノーボードだけだ、と答えた。 両方なら買おうかと思ったが、別のサーフィンだけのを選んだ。 サーファーなのか?ときかれ、そうだ、と答えると、小さいのに、よくやるねぇというような意味のことを言われた。 人のこと言えるほど身長のある子ではなかったので、 「You too! hahahaha...」 などとやってると、松っちゃんが来た。 ステッカーを買いたいと入ってきたのだそうだ。 リーバイスも買って置こうと思っていたので、そちらへ松っちゃんも道連れにむかった。 それほど、時間も残っていなかったので、まっすぐ店員の方へ行き、自分用のストレートが欲しい、と伝えた。 一本、試着をしているところへ店員はもう一本投げ入れてくれた。 後からもらった奴の方がかっこよかったので、それに決めた。 501と書いてあった。 バスが簡単にあるかと思っていた。そのバスがバス停を出て行くのが見えた。 時刻表を見ると次は30分後だった。 タクシーでもたいしてかからない距離だけど2台にしないといけないのは考えた。 歩いて帰ることになった。 地図を見ながら古谷さんが歩き出すと、タクシーのお兄さんがそんな方向にどこへ行く?と聞いてきた。 ホテルの名前を告げるとそっちではなくてあそこの大通りを行きなさいと言った。 古谷さんはそれでもこっちの方が近そうだからと歩き出した。 あやんと宇野さんは「いや。」と言って大通りに向かった。 「もう、海、みえてんねんで。」 と言われても 「い〜や!」 と言って大通りに向かった。 「なぁ。大丈夫やて。」 としつこいので、 「じゃ、後でホテルでね。」 と言うと、 「そうか、そうしようか。」 と一端は言ったものの、やはり責任感というものを持ちあわせていらっしゃる方なので、しかたなくあやん達に着いてきてた。 「ナンパしてるみたいやん。」 とぶつぶついいながら。 遠かった。 歩きつづけているうち、とにかく泳ぎたくなった。 途中、別のホテルを通り抜けしたときに、プールでゆったりと背泳ぎしている白人のおじさんはたまらなかった。 もう、ホテルの前の海岸となると、足の速い者はどんどん先に、あやんは一番後に、その差はどんどん開いてきた。 松っちゃんだけが、ときおり足を止めてあやんを待ってくれていた。 先に行ってしまった者たちはロビーで待っていた。 夕飯までの一時間、誰が言い出したわけでもないのに泳ぐことになった。 急いで着替えて部屋を出るとちょうど他の部屋の人たちとも出会った。 飯田さんがビールを取りに行かされた。 あやん達は先に降りて海岸へ出る。これがなんとわかりづらい海岸なのだろう。 案の定、飯田さんはここを見つけるのに時間がかかったようで、松っちゃんが迎えに行ってくれた。 平川君はゴーカートでスピンしたときに、係りのお兄さんに怒られてブルーになって、部屋でこもっているのだそうだ。 ローカルの少年が釣竿を持って通りかかった。 「釣れますか?」 と古谷さんが強引に日本語を押し通して話し掛けた。 なんだか、あわない返事が返ってきたので 「Can you get?」 と聞くと、これくらい..と15cm程手を広げた。 「アレノ、ムコウ」 と勇気を持って日本語を話してみたらしく、とても恥ずかしそうに口を押さえて笑った。 平川君は日本から竿を持ってきていたので、 「来たらよかったのにね」 というと、古谷さんは 「そーやなぁ!」 と言った。 熱くて熱くてたまらないので 「冷ましてくる。」 と海に入った。 ここの浅瀬はさらに浅くて膝ほどもない。 足元に海胆がたくさん落ちていた。 いくつか集めてそこに紫色の海星を目印に置いてさらに沖の方向へ歩いた。 ブレイクポイント近くで波に足を取られて転んでしまった。 膝ほどの深さしかないので全体重をもろに受けながら岩で足を擦ってしまった。 血がたくさん流れた。 あやんが海星を目印に置いておいた海胆を古谷さんが全部岸に持っていってくれていた。 握りこぶしくらいの石でその海胆を割ると、中に入っていると思っていたオレンジ色の食べられる部分がぜんぜんなかった。 古谷さんがそれの匂いを嗅いで苦しんだ。 食べられない海胆だ。 時計を見ると戻らなければならない時間になっていた。 シャワーを浴びる時間もなさそうだったので、プールを通っていくことにした。 長いくるくると回っている滑り台があって、それを通ってプールに飛び込んで、潜水で海水を流して、 プールサイドは走り抜けて部屋へ戻った。 簡単なワンピースを引っかけてロビーへ行った。 バスの時間があったので急いだのだ。 さっきバスを無視して懲りたので。 夕食はポリネシアンディナーショー。 踊りをみながら食事、というのが楽しみだった。 どこかの日本の会社の慰安旅行の団体さんと一緒になってしまった。 と言っても、この旅では初めてに近い日本人だったのでそれほどうんざりすることもなかった。 バーベキューを一気に食らいついていた。 いい感じのサンセットになって、和み出した頃、ショーが始まった。 なんだか、好きなのだ。フラダンス。 飯田さんはダイビングの最中、ずっと「トラブル、トラブル」と耳のところで手をひらひらさせていた、とからかわれた。 耳抜きがうまく出来なくて古谷さんや平川君の足手纏いになっていたらしい。 ショーが始まったらステージにあがって踊れよ、と言われていたので緊張してまっていたのに、 ステージによばれたのは慰安旅行団体の男性ばかりだった。 いつのまにか飯田さんはぐっすり眠ってしまって、ショーも終わってしまって。 みんなで飯田さんの周りで「トラブル、トラブル」と手をひらひらさせて笑った。 このまま、置いて帰ろう、と古谷さんが合図して忍び足でそこを離れた。 飯田さんはすぐに気が付いておもしろいことは起きなかった。 部屋に戻って 「終わっちゃったね」 と言った。 さっきの場所に小物入れを忘れたことに気が付いた。 たいした物は入っていないので、取りには行かないことにした。 中に、たばこのケースで作ったカードが3枚入っている。 「これを10枚集めたらハワイに連れていってあげる。」 と言ってふざけて作ってくれた。 3枚溜まったところで終わってしまっていた。 なんだか、ずるずると引き摺ってしまっていた気持ちをここに置いて行こう。 さよならだ。 3時間も眠らないうちに出発の時間が来ておこされた。 飛行機で眠りやすいようにあまり刺激的なことはしないように気を付けた。 機内食がちょうど真ん中あたりで出てくるのでまとめて眠れない。 日本に着くとまた朝が始まった。