最近は仕事もろくにしていないので、こうして週末に海に向かってドライブしても、 なんだか洗うものもない水ばかりをぐるぐるかき混ぜる洗濯機なのだろうか。 二日も家をあけるから、生ごみやら冷蔵庫やらをチェックして、車に荷物を積み込む。 このごろは4ナンバーのバンがやたらかっこよくみえる。 まだ夜があけていない。出発の時はなんで急ぐんだろう。 一刻も早くって。途中のコンビニで春キャベツロールと昆布のおにぎりと水を買った。 少し乱暴に、明け方の空いてる都心を走り抜けて東名に乗った。 横浜を過ぎるあたりでライトを消した。 買った朝食にまだ手が伸びない。 早く食べてしまっておかないと。レギュを咥えてげっぷをするのはいやだ。 東名も小田厚も空いていた。 先月だったらストレスが体から蒸発していくのがわかるのに。 クラブハウスはきちんとあった。 しーんとしていた。荷物は持たずにドアを開ける。 フロントが正面に見えるのだけど、誰もいない。 8:30に来いと言われてるのに、まだ7:40。 ベルで人を呼ぶと 「まだ早いですので、こちらでゆっくりしていてください。」 と地下の部屋に通された。 ギターやら、キーボード。雑誌。 誰かが撮った海の中の写真が置いてあった。 それを眺めて時間を流した。 男の人が突然入ってきて驚いた。 「おはようございます。」 「」 「どちらから来たのですか?」 「おはようございます。」 「今朝、着いたのですか?」 「東京  です。」 「はい。」 日本語が思い出せなくて2テンポくらい遅れて返事をするから、 会話がずれた。 またしばらく一人の時間があった後、気の合いそうもない二人が来てビリヤードを始めた。 挨拶もせずにいた。 テンションの高そうな男の人が来て目の前に座って、 自分が誰であるかを名乗って、私が誰かを確認した。 私を担当するインストラクターだと言った。 仕事を聞かれた。 (大学生、社長の家族、フリーのプログラマ・・) 3秒程迷って、 「プログラマです。」 と答えた。 今月から私は「旅人」なのに、忘れていた。失敗した。 いつのまにか隣に居たさっきの二人よりもっと気の合いそうもない男性が 「あ。僕もプログラマ」 と会話を割って入ってきた。 「旅人」と即答出来なかった事が悔しかった。 血圧を測っているとどんどんこの部屋に人がやってきた。 その度に 「ようこそ、血圧測定へ!」 とインストラクターははしゃいでいた。 私の体をバリアが包んでいる。 このバリアもそのうち溶けてなくなることはわかってる。 突然、なんの前触れもなくみなさんが部屋を出ていった。 ぼうっとしている私に 「バスが用意してありますから、乗ってください。」 とインストラクターが言った。 どうしてみんなが同時に出ていったのか不思議でバリアが少し厚くなった。 バスは下に見下ろせる海に向かって細いくねくねした坂道を降りていった。 車内はなにか和気あいあいとしているのに、 私には会話の中身がわからなくて、バリアが少しずつ厚くなっていった。 ダイビングに対する緊張より、バリアを溶かす事への緊張の方にうんざりしてきた。 ダイバー達がたくさんいる港に着いた。 バスを降りて皆さんの後につづく。 いい天気がほっとさせた。 トイレがあって 「坂東、いるか」 と看板が貼ってあった。 バンドーイルカ。 坂東、居るか? きっと私にはさっきのインストラクターがなにか指示してくれるのだろうから、 周りのみなさんはいろいろ機材を広げているけどじっと待っていた。 この時、初めて気がついた。 日本語をしゃべっていないじゃないか。 バスのなかで会話がわからなかった意味が今頃、気がついた。 英語でもない。なんだ、そういうことか。 インストラクターが来て、まずは自己紹介をと。 私の他に二人組の女の子達が一緒だった。 看護婦さんのあけちゃんとまんさん。インストラクターは山岸さん。 二人は長野から来ているそうだ。 機材のセッティングの仕方。 山岸さんの「楽しくやろう」演出が笑えた。 あざ笑うではなくて、微笑ましくて笑えた。 「長野では前のことをマエデというんですよね。」 長野から来ている二人にたいして言った。 「では、これを前の方に、あ、ごめんなさい。マエデのほうに・・・」 ややこしい。マエデでなくて、セッティングが。 これを覚えていかないと、まーやライフの人たちとの時に足手まといになるからな。 きちんと覚えねば。 さらに、やばいことに、タンクを持ち上げられない。 ゴールデンウィークにライフの人たちとセブに行く約束がある。 彼らはベテランさんばかりなのだ。 いよいよエントリー。タンクをしょって歩くのが慣れない。 手すりに到着するとフィンを履く。 しゃがんでしまったら二度と立ち上がれそうもないし、片足では立てないし。 そして、マスクを付けて...大変だ。 膝ほどもない深さの所から泳ぎはじめると言う。 もうちょっと奥まで歩かなきゃ・・って思うのだが、山岸さんが言うのだからそうなのだろう。 お。いけるな。顔を水中に入れると海の中が見えた。 さすがにグアム程ではないが、きれいなもんだった。 山岸さんは仰向けに浮かんで 「うぁー!きもちいー!!」 と叫んだ。 気持ちはわかるが、私はまだ必死だ。気持ちいいのは当たり前なんだから。 講習してくれ。 「呼吸が整った人!」 と突然振られて思わず手をあげてしまった。 「はい。一番さきにあがったあやんからいきましょう」 (あ。ちとまって、さみがりだから、一番後でないと・・・) そして、海底で別の二人が降りてくるのを岩にしがみつきながらひたすら待つ。 案の定、体が冷えてくる。 奇麗な魚が好奇心丸だして寄ってくる。 「なんだこいつ、うごけねーでやんの」 うるさい! はやくこないかなぁ。やっと一人目が私の隣に置かれた。 さみぃよぉ。ぶるぶるぶるぶるぶる。 小魚野郎がまだ寄り集まってる。 ちっさな視界の中を 「僕、紫色なの。どう?」 とばかりに右へ横切り、視界のはしまでいくと引き返して左に横切る。 だからどうしたんだよ。 いまのうちだぞ。そーしてられるのも。 やっと全員揃って泳ぎ出す。 泳ぐのはまぁ出来る。 けど、私のフィンは後続のあけちゃんかまんさんのどちらかの頭であろうものをぴたぴたとたたきつづけている。 マスククリアをひととおりして、レギュを咥え直すのもひととおりした。 それから水中散歩をしてるんだろうな、という感じ。 山岸さんも視界の中に入れておかねばならぬが、 魚も気になる。 名前などはどーでもいいが、こーいう模様の奴がこーいう行動をしてたってのをいつまでも覚えていたい。 視界にロープが入ると (あぁ、今回はおしまいか) って思った。 波打ち際から立ち上がると、なんか不思議。タンクが軽い。 誰よりも早く歩いていた。が、それも30mの命だった。 あっというまにタンクの奴はどんどん重さをアピールして腰をくだくかのようだった。 機材をおろして、タンクを換えて、次のセッティングを済ますと休憩だった。 ここでごはんを食べるのかと思って楽しみにしていた。 日向でお茶を飲みながら山岸さんの話を聞く。 次のダイブでは何を練習するかの話。 バリアの分厚い私にときおり 「だいじょぶか?」 と聞いていた。 二本目を入るという。2時までしか潜れないからと。 お腹は空いてるの峠をこしたから、まぁいい。 タンクをしょって立ち上がるのはヒンズースクワット方式では絶対無理なので、 BCを締めたらうつぶせになるべく、ひっくり返ってはいつくばってる状態から起きてみた。 お。出来るじゃん!って思ったのに、山岸さんが持ち上げていた。 二本目はまんさんが先に潜降した。 二番目に私。三番目のあけちゃんを待ってる間もやっぱり寒かった。 泳ぎだしたらそうでもないのに。 視界がきらきらする。上を振り仰いでみる。 きらきらする視界の真ん中がまっしろで端の方に向けて青いグラデーション。 きらきらしているのは小魚達。 これは、水族館では見た事ない。 あの中に入りたい。 マスクの中に海水を入れて、入れた海水を抜く練習をした。 なんだか、ふたりより私はトロいかもしれない。 それから水中散歩に入ると体が浮きはじめた。 メカニズムがわかってないし、浮上していく私を見ている山岸さんを含む三人の光景がなんだかおかしくて、なにもせずに、ただ浮上した。 天に召します、と言う感じだ。 山岸さんがBCの空気を抜く動作をするので真似してみたが何も変わらなかった。 ゆっくり、ゆっくり登っていく。 海底で私を見上げる人たち。 上を見ると水面に到着するところだった。 山岸さんももう私の隣に来ている。 水面でBCの空気を全部抜いて、山岸さんに引っ張ってもらってまた海底へ潜降した。 ちょっとだけ泳いで進むとエア切れを想定してサインのシュミレーションをした後浮上した。 今日のダイブはこれにて終了。 お弁当を食べる。 いやぁ、バリアはあいかわらず、分厚いままだ。 きっと、楽しませようと必死の山岸さんはそろそろ疲れてくるはず。 しゃべらねばね。30歳なのだから。 セブに行く予定がある事、たこを見たい事、ガラパゴスがどこなのかの話をした。 バリアはいとも簡単に溶けていくのだ。 再びバスに乗ってクラブハウスに戻る。 30人位だろうか、今夜一緒に泊まるのは。 みんなでいっせいに帰ってきたものだからお風呂もいっせいにはいることになる。 あけちゃんとまんさんとは部屋も一緒だった。 夕飯までは時間はあるし、お風呂はみんなとずらして入ることにした。 山岸さんが来て、ログブックをつけるのだが、それを今からやろうと言った。 二人は腕時計式のダイブコンピュータを持っていて、 入った時間、入っていた時間、深さ・・・いろいろ記録されていた。 私のコンピュータはレギュに付いているし、使い方もよくわからないので、 二人の記録を丸写しすることにした。 ログを付けながらいろいろ雑談もするのだけど、 この時に私が30才だというとお約束の驚き方をした。 山岸さんも同い年だという。 私が長野で小学校時代を過ごした事、趣味がたくさんあることなんかも話した。 お風呂はもう空いていた。 3人だけで入る事ができた。 温泉なのだが、ぬるくてなかなか上がれなかった。 混浴の露天風呂もあったけど、ここも3人だけで入れた。 手足に付いている泡がぬぐってもぬぐっても後から後から出てくる。 看護婦さんのまんさんが「窒素だ」と言ったが、それだけはないでしょう。 ずいぶん長い事入っていた。 夕食はバイキング形式だった。せっかく伊豆なのにハンバーグなのだ。 昼間、インストラクターをやってた人たちが着替えてウェイトレスやらウェイターに変身していた。 ビールも飲んだ。ビールを飲んだからデザートのケーキが食べられなかった。 手作りのケーキをまんさんもあけちゃんもおいしいおいしいと言って食べる。 でも食べられない。 ホットコーラを作って試飲したり。これがまたおいしくて驚いた。 今朝、待たされていた地下の部屋に移動して、ログブックの続きを書く。 圧力グループを計算したりした。 学科講習で覚えていたはずの事がもう忘れかけていた。 お互いのログブックにコメントを書きあった。 すべて書きおわるとまったりとした時間になってしまった。 まだ9時なのだけど、眠くてしょうがない。 早く部屋に帰って眠りたい。 山岸さんがトランプを持ってきた。 手品をして見せている。 もう半分しか起きていない脳で一生懸命リアクションを返した。 眠い。眠い。眠い。 あけちゃんがコーヒーを買ってくれた。 これで少しは目が冴えるかも。 カクテルはどうかと薦められた。さっきの食堂でと。 場所を変えて気分も変われば目が冴えるか・・・ 食堂は小さな三角のカクテルグラスにキャンドルを浮かべて雰囲気を醸し出していた。 写真を撮ってみたけど上手く撮れなかった。 なぜか自己紹介がはじまってしまった。 朝、プログラマだと言った気の合いそうもない人の時はよそ見をしていた。 「聞いてる?」 とつっこまれてしまって 「B型だから興味ない事には・・・」 とはっきり言ってしまった。なんでだろ。 長野から来た人たちが罰ゲームだのといってなにやら楽しそうだ。 山岸さんも、ふたりもその中に入っている。 眠い。眠い。眠い。 私に気がついた山岸さんは話題を変えにかかった。 よりによって、「愛とは」などと語りだしてしまった。 最近は「愛」などという人間が造った言葉の意味などわからなくなっていた。 わからなくてもいい。愛しているんならいたらいいでしょう。 自覚など必要ないでしょう。誰が、誰をなんて風にはしばらく考えたくない。 クラブハウス全体に流れるオルゴールに続けて朝食ができたというアナウンスが流れた。 暖かそうな日差しもあった。 朝食を摂り、体調チェックを済まし、バスで港に行く。 昨日の要領で今度は指示なしで機材をセッティングする。 思ったより覚えているもんだった。 これならセブに付いていく自信も出てきそうだ。 コンパスを使ってブイまで行き、 今回はロープを使わないで潜降するという。 エントリーしたときも強い日差しがあったのに、 顔を水中に浸した瞬間、山岸さんが「雨!」と叫んだのが聞こえた。 コンパスを見ているので雨を確かめる事はしなかった。 私を抜かして山岸さんが泳いでいった。 (あ、そのように、私の視界に入られてしまってはコンパスを使う練習が・・・) 私は視界の片隅に山岸さんをいつも確認しつつ、コンパスを見ながら前進した。 ブイに到着して顔を上げると激しい雨が降っていた。 顔にあたる大粒の雨が痛かった。 ロープを使わないのでみんなで一緒に潜降する。 なかなか沈まない。もう、出せる空気は全部出してるつもりなのに。 山岸さんがフィンを引っ張ってくれた。 1mも沈み出すとゆっくりだけども沈んでいる感じがわかった。 ゆっくりだから落ち着いて耳抜きができたし。 多分、少しずつ山岸さんがフィンを引っ張っているんだろうなと思った。 私が一番最後に海底に到着した。30歳だからゆるしてもらおう。 上を見ると水面がいつも以上に奇麗だった。 お天気雨が激しく降っている効果だろうか。 少し泳ぎだしたら、フィンが脱げそうな感じがした。 山岸さんのすぐ後に居てよかった。山岸さんのフィンを引っ張るとすぐに気がついてくれた。 ちゃんと履かせてもらって、また泳ぎだした。 肺に空気を入れると少し浮く、吐くと沈む。 言葉で理解した事を試しながら泳いでみたものの、 せっかくちょうどいいくらいに膨らんだ肺の中の空気は出さなきゃ苦しいのだ。 それならと、BCを少し膨らます。 これは、実は危険。浮き出すと止まらなくなるのだから。 山岸さんが「まて」のサインを出して何処かへいった。 すぐに戻ってきた。両手を広げている。 おお。青と緑の奇麗な大きなひれでのそのそあるく魚をつれてきている!(ほうぼう) こないだ葛西でみた。 コンパスを使って行って戻ってくるというのをした。その後水中散歩。 昨日、浮かんでいってしまった事があるのでBCの空気には気を使った。 ついつい沈みがちな浮力を取っている。 またロープの所に戻ってきてしまっている。 今回は緊急スイミングアセントで浮上する。 案の定、息は続かず、途中一回吸ってしまった。 まぁ、吸えるのだからよいのだ。 昨日と同じように、次のタンクをセットして日向で休む。 お茶をほしいといったらなぜかコーヒーのミルクを溶かしたお湯をくれた。 お茶がなかったから、と。 これもまた美味しくておどろいた。 襟元に水が染みていて寒かった。 最終ダイブ。 フィンをしっかり履く。そういえば、一つ一つの行動がだいぶ要領を得てきたように思う。 タンクをしょったまましゃがんでたちあがったりもしている。 ブイにつくと、念入りにBCやドライの空気を抜いた。 今度こそ、一人で潜降するのだ。 やっぱり一番最後になってしまったが、ひとりで潜降に成功。 マスクをはずしてはめると言うのをやって水中散歩。 岩の壁をすれすれに登っていく...ことができればそうするのだけど、 実際はロッククライミング。 ときおり、手の感触が「ふにゃ?」とかしていた。 だいたい、こういう所に潜んでいる生き物ってのは毒を持っていたりするのではないだろうか? 山岸さんがフィンで岩をつっついている。なかにはうつぼがいた。 こわこわ。でてきたらどーすんの。!でてきたじゃん! こわいよー。後ずさりしたいけどどーやってすんのぉ? 運よく、うつぼは私にしっぽを向けて泳ぎだした。 奇麗なうつぼだ。黄色と青の。しゃなりしゃなりと岩のへこんだところを滑っていく。 また山岸さんが何かを教えたがっている。 ん?私の手元には蛸がいる!山岸さんにも見せた。ごきげんだ。 山岸さんが持っているボードには「いか」と書いてあった。 視線を上げると山岸さんの頭のうしろをあおりいかが通過していった。 山岸さんは私を指差す。うしろを振り向く。何もみえない。 反対から後ろを振り向く。何もみえない。 絶対、なんか後ろにいるらしいのだが。 ちょっと動いて今自分が居たあたりを見るときれいなおでこのでっぱった大き目の魚がいた。(ぶだい) こいつはひとなつっこい。一番最初に私をからかっていた小魚は小憎らしかったが、 こいつのばぁいはなんだか憎めねぃ奴だった。 岩の壁を登り切るより少し下から壁とは反対の方向に泳ぎだした。 海底が私の体からどんどん離れていく。すこし不安な感じ。 山岸さんを目印に自分の体を一定の深度に置いて泳ぐ。 山岸さんの向こう側にはなにもない海の真ん中をあおりいかがひとりぼっちで泳いでいた。 岩の傾斜に沿ってどんどん浅い方に向かって泳いでいくとBCの空気の膨らんでいくのがわかった。 抜くのに一生懸命になっているといつのまにか浅瀬に来ていて、水面に着いた。 あ。これでおしまいだったんだ。 お疲れお疲れ。CカードGETだね。 機材は潮が着いたままクラブハウスまでもどった。 クラブハウスに着いて、機材の洗い方を教わる。 山岸さんがなかなか来ないので、別の女性のインストラクタが変わりに教えてくれた。 教わった通りに洗っていると、手首に激しい痛みが走る。 不定期になんどか痛むので手首を見ると蜂がいた。 山岸さんが手当てをしてくれた。蜂がにくらしくて涙があふれてきた。 まんさんが 「なくなぁ!」 と言って、30歳である私はみっともないので、別の事を考えて気をそらした。 やっと、お昼ご飯が食べられる。 と、カレーだった。やばし! とりあえず、一口食べてみる。 ・・・ ごはんに福人漬をまぶして食べた。 奇麗にカレーだけ残って(かなり、失礼な残し方だな)と思っていると、 まんさんが 「残す?食べていい?」 と言うので助かった。全部食べてもらった。 その後、お風呂に入る。 実は早く東京に帰りたい理由があったのでお風呂もちゃっちゃと済ますつもりでいた。 日だまりの中で露天風呂。早く東京に帰る理由と天秤にかけるとちょうどつりあった。 お風呂をあがるとログを付けなければならない。 私も焦っていたはずだけど、あんまり焦った態度は他の人をしらけさせてもよくないので、 のんびりとして見せていた。 なのに、山岸さんは飛ばした。 山岸さんはこれから長野までみんなをのせたバスを運転する。 一分を惜しんでログつけを指示していた。 私は寂しくなる。バリアを溶かしたりしなければこんな思いはしなくていいのに。 長野行きのバスとほんの少しだけ一緒の道を走れるので後ろを付いて行った。 最後の別れ道でバスの横に付けると山岸さん、まんさん、あけちゃんがたくさん手を振ってくれた。