薄い、ほとんど白に見えるエメラルドグリーンに統一された部屋。 こたつも、絨毯も壁も。 玄関を入るとそれの左手にキッチンが並んでいる。これもエメラルドグリーン。 隔てるドアもふすまもなにもなくそれらに続いている8畳ほどの部屋の真ん中にこたつを置いて、 キッチンに背を向けてテレビを見ている。 テレビに向かって右手に5段ほどの階段があって、 普通ならロフトに上がる階段のようなのだけど、これは階下に降りる為の階段。 5段下がると踊り場に着いて、90度角度を変えてまた5段づつ続いてる。 ここは最上階なので、これ以上、登る為のものはない。 若い、元気そうな人たちが玄関ではない方から、階段から入ってきて、 私を見て驚いた。 一瞬だけためらって、私の横を通りぬけ、玄関から出て行く。 誰も説明してくれないから、想像したのだけど、ここが空き部屋だったときは通路に使われていたのだろう。 けど、ここはもう私の部屋となったわけだし、常識的に考えてそれは許してはいけないことだと思った。 何回も、何回も通り抜ける人たちがあるので、ちょっと言ってみた。 警察にも通報して、警察は来てくれると言った。そのままなかなかこない。 引き返した人が二人だけ居たけど、もう何十人という人たちが通って行った。 どおして? 率直な正しい質問だと思った。けど、入ってくる人たちは平然と、 だって。あやんの部屋だから。あやんはそういう人じゃないか。 言われて素直に そうだ。 と思った。 私は、心を広く持って、常識にはとらわれず、何が正しくて誤りなのか自分で考えて生きて行く人間だ。 だから、考えてみた。この部屋を彼らが通り抜けるということが正しいのか誤りなのか。 彼らはどちらかというと私に好意的だったので、私も彼らを嫌ってはいない。 私の部屋のものが使われることもない。通路に使う空間以外は。 通してあげてもいいと思った。 ただ、問題なのは鍵だ。私が鍵を掛けてしまったらもう彼らは自由にここを通れない。 けど、夜が来て、私が眠るときも鍵を開けておくなんて。 彼ら以外の悪い奴にここが開いていることが噂で広まったら、とんでもない目にあってもおかしくないじゃないか。 そのうち、考え方が一つの方向に片より出した。どうして、私が彼らに通り抜けをさせたいのか。 一人になりたくない。 さびしい思いを取るのか、危険を取るのかになってきた。 彼らに尋ねてみる。じゃぁ、私を守ってくれるのか? 守る。って。彼らに依存しきったときに、決まって私は放り出されるのだ。 一人じゃ、生きていけなくなったときに、決まって放り出される。 ゆだねる勇気が今、一番無いんだよ。