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"In the Garth of Shidoh"
第6回 ゲスト:片倉利久
ひさびさ託生ペースの対談……?
 







 
 
 
 
 
  Illustrated by OOYA,Kazumi, Copyright (C) 1999
託生 「皆さん、明けましておめでとうございます。シリーズの掲載はお休み中ですが、コーナーは健在ですので、こちらを通して、今年もよろしくお願いします。──と。(ガサガサと急いで原稿をしまう音)えーっと、年明け初回の『祠堂の中庭で』ですが、ゲストは、1年の時にルームメイトだった片倉利久くんです」
利久 「初めて託生に『くん』付けで呼んでもらいました。片倉利久です。ちょっと、ブキミです」
託生 「ひどいなあ、ブキミってなんだよ」
利久 「なあなあ託生、質問ってどんなのが来るんだ? 俺さあ、ドキドキしちゃって、ゆうべなんか、全然眠れなかったんだ」
託生 「利久くんの期待にお応えして、それでは早速第一問。──って、テストじゃないんだった」
利久 「ははは」
託生 「あ、そう言えば利久、あれ、どうした?」
利久 「あれってどれ?」
託生 「チョコ、バレンタインの」
利久 「バ、バレンタインの、どれ?」
託生 「──なに、焦ってんの?」
利久 「べっ、別に、誰も焦ってなんか、ないぜ」
託生 「同室の岩下くんに、利久へ渡しといてって頼んだチョコ」
利久 「あ。ああ。受け取った。あの、みんなの間をグルグル回ってた、司書の中山先生からのチョコだろ?」
託生 「あれは面白かったよねー」
利久 「……いや、心臓に悪いっス」
託生 「もらいものをまわしたけど、一応、愛はこもってるからね」
利久 「そりは、どうも」
託生 「嬉しそうじゃないなあ。もう少し喜んでくれてもいいだろー」
利久 「あの日は部活でも調子悪くてさ、バレンタインデーに関しては、俺、心中フクザツってやつなんだ」
託生 「そうだ、部活の話が出たところで、利久、弓道を始めたきっかけって、何?」
利久 「カッコいいから」
託生 「はあ?」
利久 「ほら、入学してすぐの部活のデモンストレーションの時に、当時の部長が、講堂の舞台でウィリアム・テルやったじゃん。ギャグで」
Illustrated by OOYA,Kazumi, Copyright (C) 1999 託生 「ああ、全部みごとに外れたんだよね」
利久 「俺たち新入生を散々笑わせといて、その後、外の道場で、舞台の時より距離なんか倍以上あったのに、百発百中させたんだよ」
託生 「放課後? 活動を覗きに行ってたんだ?」
利久 「そ。なんかあの部長、面白そうな人だったからさ。で、俺、その時、すっごくカンドーしたんだよ」
託生 「それで入部を決めたと」
利久 「そしたら、すっげー厳しかったと」
託生 「おかげで、高校から始めたにしては、随分上達したと」
利久 「それでも吉沢の足元にも及ばないと」
託生 「そりゃ、しょうがないよ(笑)」
利久 「なーっ(笑)」
託生 「利久は弓道では吉沢くんに敵わなくて、将棋ではぼくに敵いません」
利久 「そういや、あれから全然やってないな。12月の、俺の部屋で勝負して以来」
託生 「またやろうね」
利久 「俺、いい」
託生 「なんだよー、利久はぼくと勝負するの、嫌なのか?」
利久 「イヤってわけじゃないけどさ……」
託生 「利久って、将来どうすんの?」
利久 「──託生、コロコロ話題変えるなよ。どうって、家業を継ぐとか、そうゆうこと?」
託生 「だって、母方がカマボコ屋の老舗で、父親は鉄工所の経営してて、利久、弟のいない長男じゃないか。どっちを継ぐ予定?」
利久 「うーん、うーん、うーん、それはとってもとっても難しい問題なんだなあ。実家に帰省するたびに、父親からも母親からも期待のこもった目で見られて、俺、参っちゃうんだよ。まだ先のことだし、大学進んで、その間にゆっくり決めればいいかなとは思ってるんだけどさ。託生は?」
託生 「うちは家業なんかありませんから、悩む必要も、あーりません」
利久 「そうだ、いっそ俺んちのどっちかを、託生が手伝ってくれよ」
託生 「利久、それは、ぼくに仙台へ来いと、そういうことですか?」
利久 「うん!」
託生 「あみだで決まった級長職はどうですか?」
利久 「へ?」
託生 「だから、あみだで級長、決められちゃったけど、その後どうしてますかって」
利久 「前期はやったけど、後期はしてない。ちゃんと選挙して、別の奴が──って、託生、そんなこと知ってるじゃん。なんで今更訊くんだよ」
Illustrated by OOYA,Kazumi, Copyright (C) 1999 託生 「という質問が来てたの」
利久 「え? もう質問、始まってたのか?」
託生 「──とっくだよ」
利久 「お、俺、託生とグチャグチャ喋ってただけで、まだ何もちゃんと答えてないぞ」
託生 「最後に」
利久 「えっ! もう最後!?」
託生 「去年、1年間託生くんと一緒にいて一番思い出に残ってることを教えてください」
利久 「俺?」
託生 「そう」
利久 「本人目の前にして喋るの、照れるなあ」
託生 「ぼくも充分照れ臭いから、安心して喋っていいよ」
利久 「同室になって、最初の日に、思いっきりシカトされたことかなあ」
託生 「シカトなんかしてないじゃないか!」
利久 「じゃ、託生はそのつもりはなかったかもしれないけど、俺としてはぁ、挨拶しても、話しかけても、無視され続けて、カナシカッタんですぅ。ここで、あの時の悲しみを託生にぶつけてしまいますですぅ。エイッ!」
託生 「どこが、本人目の前にして、照れてるんだよ!」
利久 「ハー、すっきり」
託生 「ぼくはちっともスッキリしないぞ! だいいち、卑怯だろ、今頃になってそんなこと言い出すの!」
利久 「じゃ、託生そうゆうことで」
託生 「こら、勝手に帰るな!」

(本文中の募集等は、雑誌掲載時のものです。現在、募集は行っておりません)





 
 
イラストレーション/おおや和美
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