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"In the Garth of Shidoh"
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第9回 ゲスト:竹内 均
竹内クンの、ささやかだけれど贅沢な夢 |
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祠 堂 の 中 庭 で |
![]() 竹内 「こんにちは」 ギイ 「オレのことも紹介しろ、託生」 託生 「秋の文化祭の折には、遠路はるばる、こんな山奥までお越しいただき、ありがとうございました」 竹内 「うちの文化祭の時は、そちらの生徒会の方が来てくださいましたから、礼を言われることではないですよ」 ギイ 「たーくーみ、オレを無視して話を進めるんじゃない」 託生 「いきなり立ち入った質問で申し訳ないんですけど、えー、噂の恋人の新島さんとは、その後どうなりましたか?」 竹内 「は?」 ギイ 「呆れたな、託生、お前それ、マジで立ち入り過ぎな質問だぞ」 託生 「でも、そういう質問のハガキをいただいてるんです」 竹内 「その後とは、どこからのその後なんでしょうか」 託生 「え……? あー、さあ、どこからでしょうか」 ギイ 「そういや、うちの文化祭の、もう終わるって頃に来てたよな、新島さん」 竹内 「来てましたね」 ギイ 「──嬉しそうに言うじゃん、竹内さん」 竹内 「そうですか?」 託生 「あれ、確か、いらっしゃった時の同伴は、生徒会の人達でしたよね。帰りはその人達とは別々だったってことですか?」 竹内 「そうですね」 ギイ 「つまり、ここで新島さんとデートの待ち合わせ、したってことか」 竹内 「違いますよ、ここでひょっこり会えたので、一緒に帰っただけです」 ギイ 「そんな乱暴な偶然、世の中にはございません。──ったく、ここから園に戻るんじゃ、ちょっとした旅行と同じくらいの移動距離だもんな。さぞや楽しい、帰路だったことでしょうね」 託生 「もしかして、ギイ、妬いてる?」 ギイ 「どうしてオレが妬くんだ? あ?」 ![]() ギイ 「──唐突に、なんですか、竹内さん」 竹内 「お互い、ほんとうに好きな人に関しては、微塵も語れないタイプだったわけだ」 ギイ 「あのですね、そりゃオレは、さすがに固有名詞を出して、だれかにそいつの、──コイツの話はしませんでしたけど、つきあってたわけでもなく展開も読めない時に、迂闊にぺらぺらしゃべったりできませんよ」 竹内 「そのくせきっと、他の人にはちゃんとバレてたんだよね。しょうがないか、目が追うから」 ギイ 「竹内さんにたてつくつもりじゃないですけど、好き嫌い以前にですね、こいつ、目が離せないほど、実に危なっかしいヤツだったんです」 託生 「そんなことないだろ!!」 竹内 「どうして気になるんだろう。いつもそれが不思議だったよ。もっとステキな人も、優秀な人も、況してや、義一くんのようにすべての憧れを詰め込んだような人がずっと身近にいたのに、どうしてあの人なのか、それがすごく不思議だよ。今でもね」 ギイ 「人を好きになるのに、目には見えない方程式があるのか、そうゆうことはわかんないですけど、でもまあ、好きは好きで、もう、しょーがないっていうか」 託生 「なんだよギイ、しょーがないって。失礼だな、それ。──えーっと、新島さんの話題が出てるので、ついでと言ってはナンですが、竹内さんいずれはお父さんの銀行を継いでいかれると思うんですけど、新島さんと一緒に仕事をされるんでしょうか? だそうです」 竹内 「先のことは、わからないな。新島さんが銀行に勤めたいのなら、ゆくゆくそうなる可能性がないとは言わないですけど、必ずしもうちの系列の銀行に就職してくれるとは限らないですし、それに、個人的に彼に便宜を図ることも、新島さん自身に由とされないですから、俺は成り行きに任せるつもりです」 ギイ 「でも、できれば同じ職場で仕事をしたいと」 竹内 「それは、もう(笑い)。──屋上で一緒に弁当が食べたいんだ」 託生 「お弁当……?」 ギイ 「随分と、ささやかな夢ですねえ」 竹内 「でも、毎日だよ。ぜいたくだろ?」 ギイ 「毎日一緒に食事をするってんなら、オレたち、そうだもんな」 託生 「うん、寮生活だからね」 竹内 「それで、他愛のない話をするんだ。ゆうべ見たテレビのこととか」 ギイ 「オレたち、けっこう他愛のない会話、してるよな」 託生 「毎日、朝から晩まで一緒なんだから、そうそう実のある話、できるわけないじゃないか」 竹内 「そうゆうのを『生活』っていうんだろ? 俺は、新島さんと生活していきたいんだ。職場が同じでも、違っていてもかまわないから」 ![]() ギイ 「ふたりして、おもいっきり、立ち入っちゃったな。反省」 竹内 「そのかわり、義一くんのこともよくわかったから、おあいこだね」 ギイ 「オレですか?、オレ、なんか言いましたっけ?」 竹内 「さあ」 ギイ 「竹内さん、オレ、なんか言いましたかー!?」
(本文中の募集等は、雑誌掲載時のものです。現在、募集は行っておりません)
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イラストレーション/おおや和美 Illustration Copyright © 1994-1999 OOYA,Kazumi First Published Copyright © KADOKAWA SHOTEN PUBLISHING CO.,LTD Copyright © 1994-1999 GOTO,Shinobu |
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