・木を植える男の話・


 フランスプロヴァンス地方を訪れたエルゼアール・ブッフィエ(Elezaeard Bouffier)が、いつの日かこの廃虚を緑の森にすることを夢見て、そこの荒れ果てた土地に黙々とドングリを一粒ずつ植えていく。二つの世界大戦の最中も関係なく。

 今プロヴァンスを訪れる観光客は、そこに広がっている美しく豊かな森が彼ひとりの手になるものだとは気付いていないのです。

 私が行っている歯周病治療とはこの「木を植える男」の仕事のようなものだと思うのです。荒れ地にも木は育むエネルギーが潜んでいるのです。木が育つ環境ができるのです。

 「歯を抜いてしまわなければ治らない」と宣告されてしまう歯周病とは、ちょうど病気になった木の根っこが持ち上がってきているような状態です。

 私だったら木を抜かずに、土を丹念に改良して、豊かな土壌に治してやって再び木が元気に生きていけるようにします。歯でいえば、なるべく歯を抜かないで、歯根を支える土壌である歯肉や歯槽骨の「自発的治癒」(=骨の再生)を促すような治療をします

 「抜かないで治す」には患者さんの治療への前向きな姿勢、ブラッシングや食生活上への気づかいなど生活習慣の改善努力が必要です。医療者と患者とが信頼しあったときにはじめて「自発的治癒」がはじまるのです。枯れ木が再び根付いて回復するように・・・・


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