江國香織 

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とるにたらないものもの 江國香織 集英社

江國ワールド。
たぶんこれを読んで「は?」と思う人もいると思うんだけど、私はわり
に好き。この人の独立独歩なところが。
この世界をキライと思う人もいるだろうけど、彼女はそのあたりをまっ
たく意に介していない感じ。
(本当かどうかは別として・・・案外気にしているかもしれないけれど・・・
そんなふうに感じるってのが、私には重要。)

 

いつか記憶からこぼれおちるとしても
江國香織 朝日新聞社

朝日新聞のサイトに、江國さんのインタビューが載っている。10代の頃、
なりたかったのは、洋服のデザイナーと裁判官とそれから果物屋だった
そうだ。ゲラゲラ笑ってしまった。

高校時代は、私の人生の中の最大の暗黒時代で、ぜんぶがぜんぶつらか
った。何がなんやら、と思う。
でも、この妙に研ぎ澄まされた、大人になる直前の感覚は、なつかしい。
男の子はこの時代、もっとどんよりとすごしているのではないだろうか。
だから、高校生同士の恋愛ってうまくいかないのではないだろうか。
って、単に私がそうだったというだけなのかもしれない。
というか、恋愛って、結局のところ、全部終わるしな。

満たされているようで、満たされていない。
大人なようで、大人じゃない。
幸せなようで、幸せじゃない。
不幸かもしれないけれど、決定的に不幸じゃない。
愛し合っているのに、さびしい。

江國さんの書くものは、だいたいが好きで、それはなぜかといえば、そう
いう感覚を描くのがうまいからだろう。

サガンもそう。
最近、読んでいないけれど、私にとってはこの2人、けっこう似ているん
だよな。

 

東京タワー 江國香織 マガジンハウス

不倫という言葉はもはや死語だな。そう思う。
森瑤子の書く小説は、結婚しているることを隠して恋愛が始まったり、
「どちらを取るのか」が問題になったり、結局は家庭を捨てられないこ
とを悟ることで恋愛が終わったりしていた。結婚生活と恋愛は両立でき
ない世界だったのだ。その切なさを描いていたのだ。
なのになのに。
江國香織は、結婚生活と両立させた恋愛の切なさを描く。
結婚? してるわよ。

物語は結婚している女性と恋愛している2人の少年の視点で描かれる。
しかし、女性たちの物の見方、考え方、スタイル、がきちんと伝わって
くる。
彼女たちは結婚生活を捨てる気なんてない。
だけど恋愛がしたい。自然に、激しく。
刹那的だから、切ないんだ。

昨日、サイモンとガーファンクルを聞いていてふと、あー私ってもうダ
スティン・ホフマンが教会から奪っていった花嫁姿のエレーンよりも、
彼を誘惑したミセス・ロビンソンとの方が歳が近いんだ〜って気付いて
愕然としたんだけど、そういう女性は古今東西存在したのに、彼女たち
の刹那的な恋愛観を描いた小説や映画ってなかったような気がする。
単に色気のある年増のおばさんとしてしか、扱われなかった。
そう言う意味ではとても新しい感覚の小説だと思う。

 

泳ぐのに、安全でも適切でもありません 江國香織 
ホーム社

短編ってそんなに好きじゃない。
浸りきれないのよね。
これまで読んだ短編(もともと少ししか読んでないのでえらそうな
ことは言えないが)でよかったな、と思うのは、太宰治、村上春樹、
カポーティあたりでしょうか。
詠美さんのも短編はそんなに好きじゃないのだ。

で、これ。
よかったよ。
いろんな世界を垣間見れた。
特に好きなのは
「愛しいひとが、もうすぐここにやってくる」かな。

こんなに淋しい雨の夜だから、私の大好きな男は妻を抱いているかもしれない。

この出だしの一文で、女性のタフさと冷静さと、そして情熱を十分
に感じる。
この本に出てくる女性はみんなタフ。タフでワイルド。
江國さんのこれまでの小説のような「少女」は出てこない。

私たちはみつめあい、猫同士みたいに微笑みあった。すると男はいきなり笑い
出し、
「まったくわからない」
と言った。愉快そうな口調だったのに、そのあと起き上がって服を身につけるあい
だに、たちまち悲しそうになった。
「なあに? なにがわからないの?」
 とり残され、淋しくなって私は訊いた。
「どうして僕は妻と別れないんだろうね」
 茶化すような口調で、でも切るように悲しい目で、私の大好きな男は言った。
 それは、でも、私にはわかりようのないことだった。私たちはまたみつめあい、微
笑みあった。
「奇妙ね」
 私はそう言ってみた。

男が妻と別れないのは、それが習慣だからです。習慣は破るより守る
ほうがラクなのです。じゃあ、この女性は男の「便利な女」になりき
っているかというとそんなことはない。淋しさと気楽さと強さとはか
なさを江國さんはみごとに描いてみせた。
なかなかいい味わいでした。

もう一つ好きだったのは「うんとお腹をすかせてきてね」。
結婚を前提としない男女の恋愛をうまく描いているの。
男は「ずるく」ない。女は「弱く」ない。そのあたりがすきよ。

「うしなう」は、まあ江國さんったら、主婦の世界をよくご存知ねっ
て感心した。

てわけで、私は好きでした。ほぼまるごと一冊。
彼女の描写がこのところ、どんどんナマナマしくなってきたことにつ
いて、いやだと思う人もいるかもしれないけど、私は、お父さんが亡
くなられて書きやすくなったんだろうなって思った。
自分をあれほど愛してくれたお父さんが、読むと思うとセックスは書
けなかったんだよ、たぶん。
それが父親に対する娘のせめてもの思いやり。
そんな気がした。

 

江國香織詩集 すみれの花の砂糖づけ 理論社 

もちろん、発売されたとき、店頭で手にして見た。
しかし、あまりに甘すぎて買う気になれなかった。さすがの私で
も。でもこの前、MOEを立ち読みしていたら、江國さんの詩が
いくつか書いてあって、ああ、けっこういいかもね、と思い、今
日買ってきた。

うん、まあいいよね、と思って。
甘いけど。
私はつねづね、江國さんとばななちゃんの違いをきちんと自分の
言葉で説明したいと考えていて(それはつまり私にとっての違い
であって、文学的な違いだとか、表現方法の違いだとか、根底に
あるものの違いだとか、そういうことじゃない)、で、なんとな
くああそういうことかと思える部分に行き当たった。
江國さんの魅力は、個人的だということだ。
他人と自分にきちんと線を引いている。びしっと。
ばななちゃんは、もっとゆるい。自分と他人の区別なんてあまり
気にしていない。他人の一部分を受け入れたり、自分の一部分を
他人にゆだねたり。それをとても自然にやってのける。依存では
なく、自分をきちんと保ちつつ。
それはつまり、人類は皆、家族というような、そういう感じ。
そんなことをちらちらと思いながら読んだ。
二人の違いを説明したいと、どうして考えるのか自分でもよくわ
からないんだけど、まあ要するに気になる作家ってことなんでし
ょう。これからも二人の違いはあれこれ思いをめぐらせていくこ
とでしょうけれども、じゃあ共通点って何よ?とも思った。

「あたし」という言葉。
これはとても難しいと思います。
YUKIちゃんはその詩で「あたし」という言葉を使います。
それはまあ、合格点に達しています。わたし的に。
だけども、うまくやらないととんでもない失敗をやらかすと思う。
私は、使わない。うまく使えないから。
あたし、を使うことで、あたしに使われてしまうことが多い。
あたし、以上のインパクトを出せないのよ。普通。
で、江國さん。
まあ合格。わたし的にね。
えらく、えらそうだけどさ。

詩の中で、江國さんが恋をしているのは、夫だけではない。
詩のトーンが同じ恋心でも、微妙に違う。
とても面白かった。

・・・

あなたはそれを 知っていたのではなかったの?
たったひとりで生まれてきたことを
わけもわからず それでも生きてきたことを
ほめてくれたのではなかったの?

(あの日母は台所にいて)

 

ホリーガーデン 江國香織 新潮社 

初めて読んだ江國さんの本がこれ。
それまでは、少女趣味な感じがして読む気になれなかった。
女同士の友情と、それぞれの恋愛が、互いに絡み合いながら、
話が展開していく。
彼女の小説には、「恋愛上手」な人はあまりでてこない。
みんな、どことなく不器用で、自分の気持ちを処理するのが下手で、
相手の気持ちを測るのが苦手で、相手との距離がうまくとれなくて。
でも、そうだから、ひたれるんだろう。
みんな、激しく怒ったり泣いたり笑ったり喜んだりはしないけど、
一生懸命に生きています。
長くて、読み応えのある点も、◎。

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薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木 江國香織 集英社

9人の女性が次々と登場し、最初のうちは、誰がどうでどうなってる
のか、記憶がつながっていかず、ちょっと頭がこんがらがる。
でも、それを乗り越えると、この物語は永遠に続くんじゃないかと
思わせる。それは「日常」の描き方がとてもうまいということでは
ないだろうか。
そしてその平凡な日常の中での、人ひとりひとりの個性の違い、
ぶつかり合わなくても歴然と違う部分、もまたうまく描写されている。

これは、文庫本になるのを待たずして単行本で買うことをお勧め!
図書館で借りるのもダメ。
だってすごくきれいな装丁なんだよ。
ゼヒトモ買ってください。

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江國香織 ホテル カクタス ビリケン出版

大人のためでもなく子どものためでもない、童話でもなければ小説でもない、江
國さんの純粋に「書きたくて書いた」お話だなと思った。

きゅうりと数字の2と帽子との間に友情が芽生えて、高まって、緩やかに解散し
ていく物語。
江國さんの恋愛小説が好きな人にとっては、物足りないかもしれません。

30分で読めます。

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