Others 

 

穂村弘「手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)」
小学館

面白かった。一気に読んだ。カフェでお茶しながら一気に。

 ライヴっていうのは「ゆめじゃないよ」って夢を見る場所なんですね

 菜のはなのお花畑にうつ伏せに「わたし、あくま」と悪魔は云った

私も、やや手紙魔なところがあって、で、けっこう昔は書いていた。
まず便箋と封筒を選んで、手紙をせっせと書いて、封をして、シール
貼って、切手貼って、ポストにぽいっ。
という一連の動作がものすごく好きなのだ。

まみちゃんは591通もの手紙を穂村さんに出して、返事は10通くらい。
いいなあ。それって。
私もそういう手紙の出し方がしたいんだよなあ。でもなんか、普通の
人との文通は、返事がこないと、出しちゃいけないかな、って思ってし
まうでしょう。
大人になるのってつらいわ。っていうか大人になると、そういう「単に
このこは手紙を書くのが好きな人なんだ」って相手が思ってくれなくな
るのよね。そこがつらいところだよ。
「あ、ごめんね、返事だそうとは思ってたんだけど」
なんて言い訳されちゃうと、ああ、返事欲しくて書いてるわけじゃない
のにって思う。
ペンパル募集。受け取るだけでいいです。

 

奥田英朗 邪魔 講談社

私はふだんほとんどミステリーを読まない。ここ数年で読んだもの
といえば、宮部みゆきの「火車」「理由」、桐野夏生の「柔らかな
頬」、東野圭吾の「白夜行」くらいなもの。怖がりなので、分厚か
ろうがなんだろうが、一晩で読んでしまわないと気がすまない。物
語が完結しないと気になって眠れないのです。
ってことで、これも一晩で読んだ。

帯に「夫などかえってこなければいい。いっそ事故で死んでくれて
もいい。そう考える自分を、少しも悪いとは思わない。ー及川恭子
・34歳・主婦」とあって、おおおっ! すごいこと言う人だわ、と
思って手にとってしまった。
しかし、こういう小説に出てくる主婦って、悩みがあるとキッチン
に立ってガスレンジを一心不乱に磨いたりするのはなぜ? 本当に
主婦ってそういうことするものなのかしら。不安を抱えたまま、カ
レーを作っていつもどおりの味だったことにほっとしてみたり。
私は悩みに浸りきるタイプなので、悩むとカレーの味は落ちます。
っていうか作れない。そんなもの。悩みを打ち消すために家を大掃
除するのも無理。
主婦が「日常」を維持するために必死になる部分が物語のひとつの
軸になっていて、それはほとんど矛盾がない状態で描かれていたの
で「そういう人もいるんだなあ」と思ったくらいだけど、実際のと
ころ、どうなんだろう。主婦ってこんなもんなんだろうか。

とはいえ、小説としてはとてもよくできていて、ぐいぐい引き込ま
れていきました。刑事と亡くなった妻の母親との交流はほのぼの。
34歳の主婦より、この刑事によっぽど共感した。

タイトルの「邪魔」は、なんか深いなあ。

 

吉田ルイ子 吉田ルイ子のアメリカ 講談社文庫

すごく古い本です。文庫になったのが1986年ですが、単行本はサイマル出版
会から1980年に出ています。ということは、ここに出てくる「アメリカ」もそれく
らい古いということです。

私が初めて読んだのは大学生の頃だけど、その時期って、外国に対する興
味がすごくあった気がする。ショッピングだの、ディズニーランドだのに対する
興味じゃなくて、ほんと純粋にどんな暮らしがあって、どんな人たちが、どんな
思いで暮らしているんだろうって。結局私は陸上競技に時間をものすごくとら
れていたので、学生時代に海外旅行へ行くことはなかったんだけど、同じ時
期に小田実の「何でも見てやろう」も読んだかな。

今日なぜふと取り出して読んだかというと、昨日買った「クミコハウス」を読ん
でいて、当時の外国に対する熱い思い?が胸によぎってきたから。(「クミコ
ハウス」というタイトルは、訳わからないかもしれませんが、これは紀行文で
す。)

全体の構成は、対談、写真、エッセーで、対談は、あの頃はとても政治的
に活動的だった女優のジェーン・フォンダなんかともやっています。
筑紫哲也氏との対談の中では、

「じゃあ、ルイ子さんはアメリカは好きで嫌いだというと、アメリカのどこが好
き?」と聞かれて、「ひとりになれること」と答えていました。
「そこからすべてが派生するんです。ただ私にとってアメリカが好きというのは
ニューヨークが好きだっていうことですね。」
「ニューヨークのひとりの空間の厳しい冷たさは、マゾ的ですが、そういう快感
と刺激と一人で生きるエネルギーを与えてくれるのです。そういう青春を送り
ましたから。」
「(ひとりであるつらさは)ひしひしと感じますね。もうなんとなしにただ涙が
出てきてね、淋しくて。枕びっしょりになるほど泣いたこと何度もあるんです
よ。」

ニューヨーク、というと当時、千葉敦子さんのエッセーなんかも一生懸命、読
んだなあ。そういう大人の孤独みたいなものに憧れていたのかもしれない。
今も、実は憧れてるんだけど。

「女が成功するには、好きだからってことだけで寝ちゃだめ、自分の目標に
とって、とくになる、しかるべき力のある人と寝なきゃだめよ」とルイ子さんは
言われたそう。
大手企業の重役に選ばれた別の日本人女性に「企業の中で成功するひけ
つは?」と聞いたところ、答えは「だれが力を持っているのか見きわめること
です」と返ってきたとか。
結局は、女も政治力。
だけど、ルイ子さんは「見かけはやわらかくても、したたかな女でいたい」と、
アメリカ的な資本主義に巻き込まれて出世する生き方を否定していた。

人種差別、民主主義、資本主義。
アメリカも今は変わっただろうけど、あの時代のアメリカをとてもきちんとす
くい上げている本だと思った。

 

August 1 2001

三島由紀夫 音楽 新潮文庫

なぜか、嫌い。たぶんあの風貌が苦手だったんだと思う。
蛇のようななんかねっとりとした妖気のようなものを感じる。
亡くなった人とはいえ、ひどい言いぐさです。ごめんなさい。

これを読もうと思ったきっかけは詠美さんと瀬戸内寂聴さんが好きだ
と言っていたから。だけどもこの恋愛上手と世間で思われている二人
がほめているこの作品を私は、そんなにいいとは思えなかったな。
女性の冷感症(不感症?)というものが前提にあるのだけど、それが
今一つ私にはよくわからなくて。

それと男の人はそんなにも女が感じたかどうか(いわゆるイったかど
うか?)を気にするのかな。
私はそのことが最も納得できなかった。
気にすること自体がね「なんで?」って。
そんなの、気にすんなよ〜!と大らかに言ってさしあげたいわ。

 

阿部和重
インディヴィジュアル・プロジェクション 新潮社

結構好きなんです。彼のこと。でも、この人が年上だったら好きじ
ゃなかったのかもしれない。年下だと突っ張ったところもかわいい
って。
これがまた辻仁成だと、おじさんのくせに青臭いって思ったりなど
して。ごめんなさい。
この本に関するインタビューでは「売ろうと思って作った」なんて
答えていましたが、そういう生意気なところがよいのです。

私こういう「男の子小説」を読んだことがなかった。だからドキド
キした。恋愛は、そんなにはでてこない。暴力的なシーンはたくさ
ん出てくる。私は、映画でもなんでも暴力的なシーンは嫌い。鳥肌
が立つ。なのにこれは、全然イヤじゃない。主人公が、暴力的でい
てかわいげがある。
あと漢字が少ない。それも内容をやわらげている。

過激な小説などと言われていたけど、全然そんなことない。
普通の男の子小説。
夏休みに虫かごとあみをもって、野山を駆けめぐる、男の子の話
と同じ感覚で読んだ

 

阿部和重 無常の世界 講談社 

このしつこい文体にはまると最後まであっと言う間に読めてしま
う。隅から隅までこの文体を貫いて、主人公の偏執狂的な性格を
見事に表現しています。改行が少なくって、文字がどんどん迫っ
てくるその勢いが、どきどきしちゃう。
あと「ていうか」。
私はこの言葉、イマドキの若者ほどに脈絡なく使えない。
阿部くんもさすがにそんなに突飛な使い方はしないけど、しょっち
ゅう出てくる。小説でこの言葉を使うのって結構勇気がいると思う
んだけど、そういうのをさらっとやるところがまたイマドキって感
じ。

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